政府がグリーン水素戦略を策定、輸出産業への育成視野に

二酸化炭素(CO2)を排出せずに生産するグリーンな水素の実用化に向けた「水素戦略」をドイツ政府が10日の閣議で了承した。国内のCO2排出削減を図るとともに、水素の環境に優しい製造から利用に至る全バリューチェーンで世界を主導する技術を確立し輸出産業に育て上げることが狙い。総額90億ユーロのプログラムを通して水素経済を実現する意向だ。

水素の製造には(1)水を電気分解する(2)天然ガスから水素を取り出す――の2方式がある。CO2が排出されないのは(1)の水電解製造方式だが、火力発電由来の電力を用いると発電の際にCO2が排出されることから、環境に負荷がかかる。温室効果ガスの排出を避けるためには電力に再生エネを利用することが必要となる。

電気分解法は電力コストがかさむことから現時点で商業的に実用化されていない。政府は助成策を通してこの壁を乗り越えられるようにする考えで、電解技術開発の支援や電解施設のコスト負担軽減を行う。コスト負担の軽減策としては電解施設の設置・運営費用の助成や再生エネ助成分担金の免除を計画している。

政府は水素を、化学・鉄鋼・セメントなどエネルギー集約型産業や交通、暖房、発電で使用することを想定。これらの川下分野でも助成を行う。

水素の供給は国外からも受ける考えだ。アフリカ諸国やオーストラリアなど太陽光発電に適した地域では水素を低コストで生産できるためで、そうした国と提携する。ゲルト・ミュラー開発支援相はモロッコと共同でアフリカ初のグリーン水素製造施設を開発する考えを表明した。プログラム総額90億ユーロのうち20億ユーロを国外との協業に投じる。

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