不正会計疑惑に揺れるドイツのフィンテック企業ワイヤーカードを巡り、欧州連合(EU)の欧州委員会が独金融当局の監督体制について調査に乗り出した。ドンブロウスキス副委員長が6月26日、ツイッターへの投稿で明らかにした。欧州証券市場監督機構(ESMA)に書簡を送り、ドイツ連邦金融監督庁(BaFin)の対応に問題がなかったか検証し、7月15日までに報告するよう要請している。
ワイヤーカードはビザやマスターカードなどクレジットカード会社向けに決済サービスを提供している。2018年にはドイツ主要30銘柄(DAX30)に入り、株式時価総額は最高250億ユーロに達した。しかし、同社は今月18日、フィリピンの大手銀行2行の口座にあったとされる19億ユーロが消えたと発表。22日にはこの現金が初めから存在しなかった可能性があることを明らかにし、債務超過は避けられないとして25日には破産手続きの開始を申請すると表明した。また、ドイツ検察当局は23日、19日に退任したマークス・ブラウン前最高経営責任者(CEO)を逮捕した。売り上げなどを偽り、株価を操作した疑いが持たれている。
ワイヤーカードを巡っては、2019年初頭から内部告発や英『フィナンシャル・タイムズ(FT)』の不正疑惑報道などが相次ぎ、同社は対応に苦慮していた。しかし、BaFinはワイヤーカードの株価下落を受け、同社株の空売りを禁止したり、関係者の証言をもとにシンガポール子会社の不正会計疑惑を報じたFT紙の記者を刑事告発するなど、当初はワイヤーカードを保護するかのような動きをみせていた。
ドンブロウスキス氏は「上場企業は適切に金融当局の監督を受けなければならない」と強調し、ESMAにBaFinの監督体制に問題がなかったか検証するよう要請したことを明らかにした。また、FT紙とのインタビューでは、少なくとも1年半にわたり不正会計疑惑が見過ごされてきた事実を念頭に、「独当局の対応に落ち度があれば、しかるべき措置を講じる」と述べ、ESMAからの報告を待って正式な調査に着手する可能性を示唆した。