ドイツ政府は15日の閣議で、鉄鋼産業支援策を了承した。国内の二酸化炭素(CO2)排出削減を図るとともに、厳しい状況に置かれている同業界が競争力を長期的に維持できるようにする狙い。
欧州の鉄鋼業界は過剰生産能力や、中国製品など域外からの低価格品の輸入で構造不況に陥っている。特に中国製鋼材は政府の補助金やダンピングなど問題が多い。
製鉄に際しては石炭を加工したコークスを用いることから、大量のCO2が発生する。ドイツでは製造業が排出するCO2の約3分の1を鉄鋼業界が占めている。
政府はこれらの経済・環境上の問題を解決するために今回の支援策を打ち出した。独鉄鋼メーカーの競争力維持に向けては、国外の不当な補助金とダンピングに厳しく対処していくほか、CO2排出権をこれまでに引き続き一定の範囲内で、無料で割り当てる。
環境面では製鉄に水素を投入することでCO2の排出を削減ないしゼロ化する技術転換を、資金やインフラ面で支援していく考えだ。鉄鋼業界の試算によると、これには約300億ユーロの投資が必要になる。
ペーター・アルトマイヤー経済相は、世界全体のCO2排出量を削減するためにも、環境基準の緩い国で生産された鉄鋼製品がドイツ製品を市場から駆逐する事態を阻止しなければならないと明言した。政府は生産時のCO2排出量が少ない鉄鋼製品を支援する意向だ。そうした製品の購入を優遇することや、法定の購入比率を設定することを念頭に置いている。