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2020/7/29

総合 - ドイツ経済ニュース

危険地域からの帰国者に検査を義務化、「第二波」への警戒高まる

この記事の要約

ドイツのイエン・シュパーン保健相は27日、新型コロナウイルス感染症の「危険地域」から帰国した人に感染の有無を調べる検査を受けることを義務化すると発表した。同相は危険地域からの帰国者が無料検査を任意で受けられるようにするこ […]

ドイツのイエン・シュパーン保健相は27日、新型コロナウイルス感染症の「危険地域」から帰国した人に感染の有無を調べる検査を受けることを義務化すると発表した。同相は危険地域からの帰国者が無料検査を任意で受けられるようにすることで国内16州の保健相と先週末に合意したばかりだが、感染者数の増加傾向が続き、流行の「第二波」到来が懸念されることから、義務へと切り替える。感染防止法に基づく省令を来週中(8月3~9日)にも施行する意向だ。検査料金は無料。

ドイツでは新型コロナの感染者数の急増を受けて、外出や接触、営業を制限する措置が3月中旬に導入された。その効果で新規感染者数が大幅に減ったことから、国(連邦)と州は4月20日から緩和を開始。その後も緩和の拡大を続けてきた。

緩和後、局地的なクラスター(感染者集団)が発生し、感染者数が一時的に増加することもあったが、傾向としては減少が続き、5月下旬以降は1日当たりの新規感染者数がおおむね300~400人の範囲に収まっていた。

だが、7月中旬になると、これが500人へと拡大。24日には805人に達し、5月14日(905人)以来の高水準に達した(食肉大手テンニースで巨大クラスターが発生した6月中旬を除く)。

最近の感染者の増加はクラスターやホットスポットの発生が原因となっていない。このため、感染経路の特定と遮断が難しい。感染者は全国的に増えており、過去7日間に感染者を全く出さなかった郡は6月14日の155郡から7月25日には84郡へと減少した。ロベルト・コッホ研究所は「この傾向は極めて憂慮すべきものだ」と懸念を表明した。

感染者が増加している背景には、感染の有無を調べる検査の実施件数が増えているというプラス要因のほか、◇社会的距離など感染防止のルールが以前に比べ守られなくなっている◇欧州域内の旅行制限緩和とバカンスシーズンの到来を受けて観光客が増えている――という事情がある。

観光地では比較的狭い地域に不特定多数の人々が集まることから感染リスクが高いうえ、観光客の一部は行楽気分とアルコールの勢いで大幅に気が緩み、感染防止ルールを無視している。すでに欧州の複数の観光地でクラスターが発生しており、英国はスペインからの帰国者に自主隔離を義務付けるルールを急きょ、導入した。

危険地域以外からの帰国者にも無料検査

帰国者が起点となり国内の感染者が急増するリスクは現実味を帯びており、シュパーン保健相と国内16州の保健相は24日の会議で、空港内に新型コロナ感染の有無を調べるテストセンターを設置することで合意した。危険地域に指定する国からの帰国者がテストを受けやすい体制を構築し、感染の第二波が発生しないようにする狙いだ。

ドイツではロベルト・コッホ研究所が危険地域に指定した国(現在およそ130カ国)からの入国者に以前から2週間の自主隔離を義務付けている。だが、このルールを順守しない人は多い。バカンスシーズンを迎えエジプトやトルコなど危険地域の観光地に旅行する市民が増えていることから、現状を放置すると国内の感染者数が再び急増する恐れがある。3月以降に感染者数が大幅に増えた際はイタリアやオーストリアからの帰国者が起点となったことから、当局は国外からの観光客の帰国に神経をとがらせている。

保健相会議ではこうした事情を踏まえ、空港内にテストセンターを設置することを取り決めた。この時点では検査の受診をあくまで任意とすることにしていた。検査の義務化は基本法(憲法)で保障された自由権の制限に当たり、裁判となった場合、違憲判決が下されるリスクがあるためだ。新型コロナ規制絡みの裁判ではすでに違憲判決が複数、出ており、行政当局は政策の修正を余儀なくされてきた。

それにもかかわらずシュパーン保健相が義務化に踏み切るのは、任意検査では充分な感染防止効果を得られないと判断したためだ。

24日の保健相会議ではまた、リスク地域以外からの帰国者も感染検査を帰国後72時間以内に無料で受けられるようにすることを取り決めた。これらの帰国者は空港内のテストセンターでなく、空港外の施設を利用することになる。

会議ではさらに、感染経路を追跡できるようにするため、危険地域からの入国者を対象とする所在追跡・健康質問票の再導入を決めた。旅客機だけでなく、船舶、鉄道、バスで入国する人にも記入を義務付ける。乗用車で入国する旅行者などには抜き取り方式で国境検査を実施し、危険地域からの入国者がいた場合は2週間の自主隔離義務を伝える。

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