スイス化学大手のクラリアント(ムッテンツ)が競合との合併ないし買収を模索している。ハリオルフ・コットマン社長が『フランクフルター・アルゲマイネ』紙に明らかにしたもので、M&Aを通して事業規模を拡大しなければ人員削減の拡大が避けられなくなるとしている。
化学業界では収益力の低迷を背景に近年、M&Aを通して事業規模を拡大する動きが強まっている。このため同社は事業規模を拡大しないと生き残れないと判断。2017年に米同業ハンツマンと合併することで合意した。コットマン社長はこの時、「今後5~10年間、売上高で少なくとも130億~140億ドルを実現する企業が業界再編のトレンドを主導していく」との見方を示した。
ハンツマンとの合併計画は株主の反対にあいとん挫した。クラリアントはこれを受け、戦略安定大株主となったサウジアラビア基礎産業公社(SABIC)の協力を受けながら事業再編を行い、売上高と収益力を強化していく方針を打ち出した。これに伴いマスターバッチ事業を米同業ポリワンに売却した。顔料事業も放出する計画だ。
これにより同社の事業規模とコストのバランスが悪化することから、合併・買収を通して事業規模を拡大しないと、調達や人事、ITなどの分野で従業員およそ1,000人の追加削減が避けられなくなるという。クラリアントの従業員数は昨年末時点で1万7,000人。すでに今後2年で600人を整理することが決まっている。
コットマン社長は合併・買収の候補企業を明らかにしていない。市場では米セラニーズ、アシュランド、W.R.グレースが有力視されている。