新型コロナウイルスの新規感染者数がここ1カ月ほど、増加し続けている。感染防止に向けたルールを順守しない市民が増えているうえ、夏季バカンスで国外などに旅行する人も多いためだ。メディアでは連日、危機的な状況が再来する可能性があると大きく報じられているが、マスク着用義務などが軽視されている現状は改善していない。4月から段階的に進められてきたコロナ規制の緩和をさらに進めるのは難しい状況で、規制の再強化を検討する動きが出ている。
ドイツでは新型コロナの感染者数の急増を受けて、外出や接触、営業を制限する措置が3月中旬に導入された。その効果で新規感染者数が大幅に減ったことから、国(連邦)と州は4月20日から緩和を開始。その後も緩和の拡大を続けてきた。
緩和後、局地的なクラスター(感染者集団)が発生し、感染者数が一時的に増加することもあったが、傾向としては減少が続き、5月下旬以降は1日当たりの新規感染者数がおおむね300~400人の範囲に収まっていた。
だが、7月中旬になると、これが500人へと拡大。その後も増加傾向が続き、今月12日には1,516人に達した。これは4月24日(1,903人)以来の高い水準だ。ピーク時の3月末から4月初旬に記録した6,000人超に比べると4分の1にとどまっているものの、3月中旬から下旬にかけて短期間で急増したことを踏まえると楽観できる状況とは言えない。
国内で感染した人は現在、感染者全体の69%を占める。クラスター(感染者集団)は主に私的なパーティーや、結婚式など親族の祝い事で発生。レストランなどの飲食店も感染のホットスポットとなっている。
イェン・シュパン連邦保健相は、150人を招待して結婚式を挙げるという希望は理解できるとしながらも、アルコールが入るとわずか20人の集まりであっても社会的距離などの感染防止ルールが順守されなくなるという現実を指摘。パーティー参加者の数を制限するなど集会規制の再強化を州当局と共同で検討する意向を表明した。秋に入り今後、気温が下がり、感染が拡大しやすくなるという事情も念頭に置いている。
スーパーなどの小売店や公共交通機関では最近、マスクを着用していなかったり、鼻を出す形で着用している人を見かける。国内各州のルールでは口と鼻をともにマスクや布で覆わなければならないため、これは違反行為である。暑い中で息苦しいという事情はあるにしても、放置すると違反者が増え感染拡大につながる恐れがあることから、一部の州や市は規制強化に乗り出した。デュッセルドルフを州都とするノルトライン・ヴェストファーレン州では公共交通機関でのマスク着用義務に違反した人に有無を言わさず150ユーロの罰金を科す規則が12日付で施行された。
コロナ規制のルールを軽視・無視する人は若い世代に多い。これを反映して新規感染者の平均年齢は5月の48歳から34歳へと低下している。
トップレベルの政策調整再開か
国内の感染者に占める国外で感染した人の割合は31%に上る。同比率は上昇傾向にある。ニーダーザクセン州保健省によると、国外で感染した人が国内のパーティーなどで感染者を増やすケースが増えているという。
当局はすでに、新型コロナ危険地域からの帰国者に空港や国境などで無料のPCR検査を義務付け、国内の感染拡大防止に努めている。ただ、検査をにわかに導入したこともあり、受検者への通知が遅れたり、感染者の連絡先が分からないなどのトラブルが発生している。
ニーダーザクセン州政府は州内の感染者増加を踏まえ17日、予定していたコロナ規制の追加緩和を少なくとも9月半ばまで延期することを明らかにした。カローラ・ライマン州保健相は「コロナ規制のさらなる緩和は、新学期のスタートと多くの旅行者の帰国が感染者数にもたらす影響が明らかになるまでは視野に入らない」と明言した。
メディア報道によると、メルケル連邦首相と国内16州の首相は国内の新型コロナ対策を調整するための会議を来週にも開くことを検討しているもようだ。同会議は感染者数が急増した3月下旬に開始。当初は足並みがそろっていたものの、4月下旬の規制緩和開始後は思惑や利害のズレが大きくなり、6月17日以降は開催されていない。感染第二波が現実味を帯びていることから、国と州が政策を再び緊密にすり合わせる必要性が高まっている。与党・社会民主党(SPD)のカール・ラウターバッハ連邦議会議員(保健政策担当)は「国は(コロナ対策で)再び中心的な役割を担うべきだ」と強調した。