ドイツ政府は19日の閣議でワイン法改正案を了承した。ドイツワインの国際競争力を強化することが狙いで、ブドウの糖度に基づくこれまでの品質基準を、「テロワール」に基づく基準へと変更する。フランスやイタリア、スペインなどのワイン大国が採用する原産地呼称統制制度に追随する格好となる。法案は連邦議会(下院)と連邦参議院(上院)の可決を経て施行される。
ドイツではワイン法の規定に基づき、収穫時のブドウに含まれる糖度に従ってワインの等級が決定されている。肩書付上級ワインであれば、最もランクの低い「カビネット」で73エクセレ(糖度の単位)以上、その上の「シュペートレーゼ」で85エクセレ以上、最上級の「トロッケンベーレンアウスレーゼ」で150エクセレ以上の糖度が必要となる。
糖度で品質が決まるドイツでは優れたワインを醸造しても、エクセレ度が基準に達していないと低ランクのワインとしてしか販売できないという問題が以前から出ていた。このため高品質のワインを挑発・批判の意を込めて、あえて最低ランクの「ターフェルワイン(テーブルワイン)」扱いで販売するワイナリーもある。
国際市場では原産地統制呼称制度に基づくフランス産ワインなどの競争力が高く、ドイツワインの存在感は薄い。世界的にはワインの評価に際して土壌、気候、地形など品質に影響を与える自然条件の総体を意味するテロワールが重視されていることが一因となっている。
糖度重視の現行制度に不満や危機感を持つワイン農家が増えていることもあり、政府はワイン法の改正へと踏み切った。フランスの原産地呼称統制(AOC)制度に倣い、品質が高ければ高いほど、ラベルに表記する原産地情報を小区画のものにできるようにする。最高級ワインはワイン畑の名前を冠することになる。最低クラスのワインは原産地情報が表記されない。