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2020/9/2

総合 - ドイツ経済ニュース

コロナ規制を国と州が再調整、マスク義務違反の罰金などで合意

この記事の要約

ドイツのアンゲラ・メルケル連邦首相と国内16州の首相は8月27日のテレビ会議で、新型コロナウイルスの感染拡大防止に向けた政策を取り決めた。国(連邦)と州がコロナ対策を調整するのは6月中旬以来で、およそ70日ぶり。コロナ規 […]

ドイツのアンゲラ・メルケル連邦首相と国内16州の首相は8月27日のテレビ会議で、新型コロナウイルスの感染拡大防止に向けた政策を取り決めた。国(連邦)と州がコロナ対策を調整するのは6月中旬以来で、およそ70日ぶり。コロナ規制の緩和を各州が独自に進めた結果、州ごとのルールの違いが大きくなり、厳しい規則に対する市民の理解が低下したり、効率的な感染防止策を進めにくいなどの弊害が目立ってきたことから、政策をすり合わせる必要性が高まっていた。

メルケル首相と州首相のコロナ対策会議は、感染者数が急増した3月下旬に始まった。当初は足並みがそろっていたものの、4月下旬の規制緩和開始後は思惑や利害のズレが大きくなり、6月17日以降は開催されていなかった。7月中旬から感染者の増加傾向が続いていることから、今回の会議が開かれた。

会議では◇公共交通機関や小売店でのマスク着用義務に違反した者に最低でも50ユーロの罰金を科す◇政府がコロナ危険地域に指定した国・地域からの帰国者に原則14日間、最低4日間の自主隔離を義務付ける◇非危険地域からの帰国者に現在、無料で提供している任意のPCR検査を9月15日で打ち切る◇大型イベントの開催禁止期限を年末まで延長する――などを取り決めた。

マスクの着用は現在、国内の全州で義務付けられている。だが、主流の布製マスクは鼻の空気の通り道をふさぐことが多く息苦しいなどの事情から、着用しなかったり、鼻を覆わずに着用する市民が少なくない。

違反者に対する取り締まり状況は州によって大きく異なる。同国南部のバイエルン州では1回目の違反に250ユーロ、2回目以降に最大500ユーロの罰金を科している。一方、ザクセン、ザクセン・アンハルト、ザールラントなど感染者数が少ない州は罰金を科しておらず、着用義務は紙の上でしか存在しない。今回の会議では同義務に実効性を持たせるために50ユーロ以上の罰金徴収を取り決めた。ただ、ザクセン・アンハルト州は、州民は着用義務を順守しているなどとして同意を拒否したことから、罰金導入は15州にとどまる。

コロナ危険地域からの帰国者に対しては感染の有無を調べるPCR検査の受診が8月上旬に急きょ、義務化された。夏季休暇シーズンの開始後、危険地域であるトルコや西バルカン諸国に里帰りする移民系市民が大幅に増加したり、人気の高い観光地であるスペインなどが危険地域に再指定されるといった状況を受けた措置だ。空港などで検査を強制的に受けさせることで、帰国者を起点とする国内感染の拡大を抑止する狙いがある。料金は無料。

国と州は今回、この措置を9月末で打ち切ることを決めた。10月1日以降は、危険地域からの帰国者に14日間の自主隔離を義務付ける。PCR検査で感染していないことが確認されれば、隔離義務を解除するものの、帰国後4日間は検査を受けることを認めない。帰国直後の検査を禁じるのは感染後、一定期間が経過しないと感染しているかどうかを検査で調べられないという事情があるためだ。

自主隔離義務を守らない市民は多い。このため政府は監視体制を強化するとともに、違反者に罰金を科すよう州に要請している。また、危険地域からの帰国者の隔離を監視しやすくするため、入国データを電子化して各地の保健当局が利用できる体制の構築を急いでいる。

国と州は危険地域への出国を可能な限り抑制することでも合意した。これらの国に不要不急の旅行をあえて行い自主隔離ないし感染による病休となった被用者に対し、病休時に本来支払われる給与(Lohnfortzahlung im krankheitsfall)を支給しないルールを近く、導入する意向だ。

帰国者のPCR検査を強化した結果、国内の検査能力は限界に達している。秋から冬にかけて気温が低下すると感染が拡大しやすくなり、感染防止の重要度が高い病院や老人ホームなどで必要な検査を行えなくなる恐れがあることから、帰国者への無料の強制・任意検査を終了する。

国と州は6月、社会的距離など衛生ルールの順守と、接触追跡が不可能な大型イベントの禁止期限を8月末から10月末へと延長することを取り決めた。今回の会議ではさらに年末まで延長することで合意した。衛生ルールの順守と接触追跡が可能なイベントは対象外となる。