シャープは7日、現行の通信規格であるLTE(4G)の特許などをめぐり自動車大手の独ダイムラーを提訴していた係争で両社がLTEを含む無線通信関連規格必須特許のライセンス契約を締結したと発表した。シャープがダイムラーの部品サプライヤーと結ぶライセンス契約を補完するものとしている。ダイムラーは独メディアに、シャープが訴えを取り下げたことを明らかにした。
シャープはダイムラー車に搭載されている通信技術が同社の特許を侵害しているとして、差止と損害賠償の支払いを求める裁判をドイツで起こした。ミュンヘン地裁はこの訴えをともに認める判決を9月に下しており、シャープが保証金を納めれば仮執行され、ダイムラーは同国内で当該車両を販売できなくなる恐れがあった。今回の合意によりそうした事態は回避された。
ダイムラーは同様の訴訟をフィンランドのノキアとの間でも抱えている。この裁判でもダイムラーは一審で敗訴した。これに絡んで同社の広報担当者はハイテク専門サイト「ハイゼ・オンライン」に、「今回の(シャープとの)合意はノキアとの訴訟に影響をもたらさない」と明言。「自社のサプライヤーがすでに相応のライセンス料を支払っていれば、企業はそうした必須特許の使用を禁じられえないという見解をダイムラーは現在も保っている」と強調した。ダイムラーは主要な係争相手であるノキアとの訴訟に集中するためにシャープとの合意に踏み切ったとの見方を同サイトは示している。
車載通信機器の特許をめぐっては、通信技術の特許を持つ企業と自動車メーカーが争うケースが増えている。自動車メーカーは車載通信技術の特許料を、車両向けに通信ユニットを納入するサプライヤーが支払うべきだと主張。これに対し通信技術の特許を持つ企業は自動車メーカーが支払うことを要求している。
背景には、ライセンス料はライセンスを使用した製品の価格の通常、数パーセントに設定されるという事情がある。車載の通信用半導体チップと完成車では価格がけた違いで異なることから、通信特許の保有企業はライセンス料の支払いを完成車メーカーに求めている。