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2020/10/21

総合 - ドイツ経済ニュース

GDP見通しを共同予測が下方修正、ロックダウン緩和後の急回復が最近は鈍化

この記事の要約

Ifo経済研究所やキール世界経済研究所(IfW)など有力経済研究所は14日発表した『秋季共同予測(秋季GD)』で、ドイツの成長率予測を引き下げた。前回予測(春季GD)を発表した4月上旬に想定していたよりも景気回復のスピー […]

Ifo経済研究所やキール世界経済研究所(IfW)など有力経済研究所は14日発表した『秋季共同予測(秋季GD)』で、ドイツの成長率予測を引き下げた。前回予測(春季GD)を発表した4月上旬に想定していたよりも景気回復のスピードが鈍いためだ。IfWのシュテファン・コーツ景気研究主任は「春の景気急落からは大きく回復したものの、正常化に向けた今後の回復プロセスは足取りが重くなる」との見方を示した。

同国の国内総生産(GDP)はコロナ禍の直撃を受けて第1四半期(1~3月)に前期比で実質2.0%減少。第2四半期(4~6月)には減少幅が過去最大の9.7%に達した。

景気が最も冷え込んだのは全国規模の厳しいロックダウンが実施された3~4月で、各種の経済指標は軒並み、記録的に悪化した。ロックダウンの緩和後は急速に回復しており、秋季GDは第3四半期(7~9月)のGDPが前期比で6.5%拡大するとみている。

だが、回復のスピードはここにきて鈍化している。その大きな原因のひとつは飲食、旅行、イベント、航空など人と人の物理的な接触を伴う業界で厳しい状況が依然として続いていることにある。これらの業界は感染防止策がほぼ不要になるまでは回復できない見通しで、秋季GDは来年秋まで待たなければならないとみている。

先行き不透明感と自己資本の悪化を受けて世界の企業が投資を控えていることも、輸出大国ドイツの足かせになる。

秋季GDはこうした事情を踏まえ、今年の実質GDP成長率を春季予測のマイナス4.2%からマイナス5.4%へと下方修正。来年についてもプラス5.8%からプラス4.7%へと引き下げた。再来年はプラス2.7%を見込む。

ドイツ経済は来年末になって新型コロナ危機前の水準をようやく取り戻す見通し。それでも仮にコロナ危機がなかった場合に比べGDPは2.5%低い水準にとどまり、経済が正常化するのは2022年末になるというのが秋季GDの見方だ。

コロナ禍は「外因性のショック」

コロナ禍の影響は労働市場にも強く現れている。国の操短手当制度の効果で失業者の増加は大幅に抑制されているものの、年央までに推定82万人もの雇用が失われた。今年は失業率が昨年の5.0%から5.9%へと大幅に上昇し、来年も5.9%で高止まりする見通しだ。

感染防止に向けた国や個人の取り組みを背景に個人消費は今年6.6%減少する。ただ、家計が悪化している世帯は比較的少ないことから、旅行などに投じる予定だった資金を貯蓄に回す消費者が多く、第2四半期には貯蓄率が過去最高の21%に達した。これに伴い今年と来年は一般世帯の購買力が総額1,500億ユーロも拡大する見通し。コロナ禍の終息後はこれらの資金が消費に回り、個人消費が急速に回復する可能性もある。

秋季GDはリーマンショックに伴う2009~10年の経済危機と新型コロナ危機の比較も提示した。それによると、09/10年の危機は長年にわたる金融のゆがんだ発展を背景に起きたことから、調整期間が長期化。これに対し今回の危機は「外因性のショック」であるため、生産構造が受けた影響は小さい。ロックダウンの緩和直後に経済が急速に回復したのはこのためだとしている。

今後の景気の最大の不確定要因としては新型コロナ感染症がどのように推移するかが定かでないことを挙げた。今回の予測は感染防止策が来年夏半期(4~9月)までに、経済活動にほとんど影響をもたらさない程度まで緩和されることを前提に作成されている。

不確定要因としてはこのほか、◇コロナ禍に伴う国内外の企業倒産の規模が読めない◇米中などの通商紛争――を挙げた。英国が欧州連合(EU)からの離脱の「移行期間」中に新たな通商協定を結べないリスクが高まっていることについては、暫定合意の取り決めを通して経済関係の大幅悪化が回避されるとの前提に立っている。