自動車部品大手の独コンチネンタルは4日、二酸化炭素(CO2)の排出量を差し引きでゼロにする炭素中立(カーボンニュートラル)を2050年までに実現する方針を打ち出した。欧州連合(EU)などの規制強化や、温暖化防止に向けた取り組みの強化を求める消費者、投資家、自動車メーカーの圧力を踏まえた措置。性能の高い製品を製造できたとしても持続可能性原則に抵触する企業とは取引を打ち切る動きが自動車メーカーの間で出始めており、サプライヤーは対応を求められている。
コンチネンタルは炭素中立の実現に向けまず、電気自動車(EV)、燃料電池車(FCV)、電車、その他のゼロエミッション車向けの事業で22年から炭素中立を実現する。自社の生産だけでなく、川上部門と廃車も対象としている。炭素中立の実現に向けては、植林・エコシステム再生プロジェクトなど大気中からCO2を吸収するネガティブエミッション活動を活用する。
炭素中立実現の対象を当面ゼロエミッション車向け事業に限る背景には、製品ライフサイクル全体でみると、EVなどは内燃機関車よりもCO2排出量が多いとする批判がある。原料の採掘から完成車の製造に至る過程全体でCO2が大量に発生しているためだ。EVに使用する電力が火力発電に由来していればカーボンフットプリント(原料採掘から生産、廃車、リサイクルに至るライフサイクル全体のCO2排出量)は一段と増える。
欧州ではこうした現状に対する消費者の批判が強い。国際アンケート調査によると、ドイツでは3人に1人、フランスでも4人に1人がカーボンフットプリントを理由にEVを購入しないと回答した。米国は11%、日本は1%にとどまる。
投資家の間でもESG(環境、社会、ガバナンス)を重視する傾向が急速に強まっていることから、炭素中立に鈍感な企業は資金調達でも不利になる。
自動車メーカーは環境や人権を基準にサプライヤーを選別する取り組みを開始している。ダイムラーの乗用車・バン子会社メルセデス・ベンツは11月、調達先の選別基準に「持続可能な開発目標(SDGs)」を加える方針を明らかにした。車載電池の原料の採掘で人権侵害や環境破壊が起きている現状を踏まえたもので、今後は認証を受けた鉱山で産出された原料を用いたサプライヤーからのみ電池を調達する。まずは主要原料のコバルトとリチウムを対象に同方針を適用する。将来的には電池の他の原料と電池以外の分野にも拡大することを視野に入れている。フォルクスワーゲン(VW)も車載電池分野のサプライチェーンを全面的に把握し、持続可能性原則を順守できるようにする意向だ。
コンチネンタルは炭素中立の対象分野を将来、一段と広げる考えで、40年までには自社の生産活動全体、50年までには自社の全事業で実現するとしている。アリアーネ・ラインハルト取締役(人事・持続可能性担当)は「持続可能な事業は将来の事業だ」と述べ、炭素中立の実現を通して競争力と収益力を強化する方針を表明した。