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2020/12/16

総合 - ドイツ経済ニュース

本格ロックダウン16日に導入、小売店などの大半が店舗営業禁止に

この記事の要約

ドイツのアンゲラ・メルケル連邦首相と国内16州の首相は13日に開催した緊急会議で、新型コロナウイルスの感染拡大防止に向けた措置を強化することを取り決めた。新規感染者数が増加に転じるなど状況がにわかに緊迫してきたことに対応 […]

ドイツのアンゲラ・メルケル連邦首相と国内16州の首相は13日に開催した緊急会議で、新型コロナウイルスの感染拡大防止に向けた措置を強化することを取り決めた。新規感染者数が増加に転じるなど状況がにわかに緊迫してきたことに対応。これまで実施してきた緩やかなロックダウン(都市封鎖)を16日から本格的なロックダウンへと切り替える。厳格な感染防止策は差し当たり1月10日まで実施される。

同国では秋以降、新規感染者数が増加し続け10月末には2万人弱まで拡大したことから、11月2日付で今年2度目のロックダウンが導入された。ただ、マスクの感染予防効果など新型コロナに関する知見が増えたこともあり、食料品店など一部の例外を除き店舗営業が禁止された春のロックダウンに比べ規制は緩やかだった。

「ロックダウン・ライト」と呼ばれるこの措置は一定の効果を上げた。新規感染者数の急増にひとまず歯止めがかかり、横ばいに転じたのだ。

ただ、感染者数自体は極めて多く、人口10万人当たりの直近7日間の新規感染者数は国内のほとんどの地域で危険水準(計50人超)にとどまり続けていた。同50人を超えると感染経路の追跡・遮断が難しく、最終的に医療崩壊につながりかねないことから、国と州はこれを50人以下へと引き下げることを目指している。

新規感染者数はここにきて再び上昇へと転じ始めている。独ロベルト・コッホ研究所(RKI)は11日、新型コロナの10日の新規感染者数が2万9,875人となり、過去最高となった前日(2万3,679人)から一気に6,000人以上、増加したことを明らかにした。緩やかなロックダウンでは感染拡大を十分に抑制できないことが鮮明となった格好で、メルケル連邦首相と国内16州の首相は13日に急きょ、会議を開き、本格的なロックダウンへの切り替えを決めた。すべての州が足並みをそろえて規制を厳格化するのは、規制の緩い州があると他の州からショッピング客などが押し寄せ、感染拡大の防止効果が弱まるためだ。

ドイツ全体の人口10万人当たりの直近7日間の新規感染者数は10日に156人となり、前日から7人増えた。危険水準の最低ラインの3倍を超えたことになる。すべての州が50人超となっており、最大のザクセンは313人に達した。一時は50人を下回っていたシュレスヴィヒ・ホルシュタイン、メクレンブルク・フォーポマーン両州もそれぞれ68人、71人に達した。10日の感染死者数は598人で、こちらも過去最高を更新した。

メルケル首相は以前から、厳しい制限措置を求めてきたが、規制権限を持つ州の同意を得られず実現できなかった経緯がある。今回は州サイドも危機感を共有。これまでで最短のわずか1時間の協議で制限措置の強化を決めた。メルケル首相は会議後の記者会見で「我々は行動を余儀なくされており、これから行動する」と述べた。

規制緩和を24~26日の3日に短縮

国と州は11月25日の会議で、12月23日~1月1日の期間、制限措置を緩和することを決めていた。クリスマスと年越しパーティーが家族や友人との紐帯を保つうえで極めて重要なイベントであることを考慮したもので、家族数にかかわりなく最大10人(14歳未満の子供を除く)が集まることを認めていた。

今回の会議では緩和期間を12月24~26日の3日間へと大幅に縮小することを決めた。一堂に会することができる人数も親兄弟などの近親者(非婚家族を含む)5人まで(子供を除く)に制限される。

年末恒例の花火販売は禁止される。打ち上げ自体は禁止されないものの、国と州は自粛を呼びかけている。打ち上げで怪我をした人が病院に運び込まれると、コロナ患者への対応でひっ迫している病院の負担が一段と増えるためだ。

店舗営業が認められるのは食料品店やスーパーマーケット、ドラッグストア、薬局、眼鏡屋、ガソリンスタンド、自動車・自転車修理店、銀行、クリーニング店、コインランドリーなど日々の生活の維持に最低限必要な事業者に制限される。これまで営業が認められていた理容・美容店は閉鎖される。飲食店はこれまでに引き続き店内飲食サービスを禁止されるものの、テイクアウトとデリバリーは継続できる。

路上や広場など公的な場所での飲酒は禁止される。違反者には過料が科される。

ミサなどの宗教行事は社会的距離とマスク着用ルールの順守を条件に認められる。讃美歌などを合唱することはできない。

固定費の最大90%を補償

営業制限措置の影響を受ける事業者や自由業者には補償措置が取られる。売り上げの減少度(前年同月比)に応じて家賃などの固定費の最大90%の支援を受けることができる。支援額は原則的に月20万ユーロが上限となるが、特別なケースでは50万ユーロに引き上げられる。また、販売機会の喪失で商品の価値が低下した場合は、減損処理による税負担の軽減を簡単かつ迅速に受けられるようになる。

国の支援総額は月112億ユーロに達する見通しだが、独小売業中央連盟(HDE)は規模が小さすぎると批判している。書き入れ時の12月に営業を禁じられることの痛手は極めて大きいためで、都市中心部で店舗を運営する中小企業を中心に倒産が相次ぎ、最大25万人が失業すると警鐘を鳴らした。

学校と保育施設は原則的に閉鎖される。これに伴い通勤できなくなる子持ちの被用者については有給休暇を取得できるようにする意向で、政府は速やかに法改正を行うとしている。

メルケル首相と国内16州の首相は1月5日に次回会議を開き、11日以降のコロナ規制を協議・決議する予定だ。厳しい制限措置は継続されると目されている。

一部の州は今回の決議より踏み込んだ制限措置をすでに実施している。ミュンヘンを州都とするバイエルン州は不要不急の外出を9日付で禁止。外出できるのは出勤、通学、買い物、運動、ミサへの参加などに限られている。16日からは通勤や緊急通院などの例外ケースを除く夜間外出禁止令(21~5時)の適用地域を州内全域に拡大する。これまでは夜間外出禁止措置を、人口10万人当たりの7日間の新規感染者数が200人を超える超危険地域に限って実施してきた。

人口当たりの新規感染者数が断トツで多いザクセン州では食料品店、ドラッグストア、薬局などを除く小売店の実店舗営業が14日付で禁止された。屋外でのマスク着用も義務付けられている。ミヒャエル・クレッチュマー州首相は「コロナの状況は春よりも厳しい」との認識を示した。

西南ドイツのバーデン・ヴュルテンベルク州では夜間外出(20~5時)が12日から原則禁止となっている。