ドイツのアンゲラ・メルケル首相と国内16州の首相は19日のテレビ会議で、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐための措置を延長・強化することで合意した。12月中旬に開始した本格的なロックダウンの効果で新規感染者数は減少しているものの、従来のウイルスより感染力の高い変異種が出現したことから、さらに踏み込んだ措置を実施する。
人口10万人当たりの直近7日間の新規感染者数はピーク時に150人を超え、感染経路の追跡・遮断が可能な水準(同50人)の3倍以上に達していた。19日は123人となお高い水準にあるものの、最悪期は脱している。
英国やアイルランドで猛威を振るっている変異種「B1.1.7」は感染力が従来種の1.7倍と高い。すでにドイツでも感染が確認されていることから、国と州の危機感は大きく、25日に予定していた今回の会議を前倒しした。メルケル首相は会議後の記者会見で「ウイルス拡散を防ぐ我々の全努力にとって甚大な危険だ」述べた。
会議ではこの認識に基づき、現行のコロナ制限措置の期限を今月末から2月14日へと延長するとともに、新たな対策を導入することが取り決められた。社会生活と仕事の上では、公共交通機関と店舗での医療用マスクの着用義務化と、在宅勤務を可能な限り実施することを雇用主に義務付けるルールの導入に特に注意を払う必要がある。
公共交通機関と小売店などの店舗ではこれまでもマスク着用が義務付けられていたが、マスクの種類については規制がなく、布マスクを使用する人が多かった。だが、布マスクには着用者の感染を防ぐ効果がほとんどないことから、国と州は布マスクよりも感染拡大防止効果の高い医療用マスクなどの着用義務を導入することにした。具体的には医療用マスク(通称OPマスク)、ないしフィルター機能が高い「FFP2」「N95」「KN95」などの微粒子用マスクを着用しなければならなくなる。
FFP2など微粒子用マスクはOPマスクに比べ感染防止効果が格段に高い。ただ、価格は1枚数ユーロに上り、数十セントのOPマスクを大幅に上回る。
違反企業の罰金は3万ユーロ
労組系のハンス・ベックラー財団が12月に発表した調査によると、就労者全体に占める「勤務を全面的ないし主に自宅で行う人」の割合は、緩やかなロックダウンが導入された11月時点で14%にとどまった。第1回目のロックダウンが実施されていた4月(同27%)に比べおよそ半分に減っている。
国と州はこれを踏まえ、自宅でも仕事を行える被用者に対し在宅勤務を促すことを雇用主に義務付けるルールの導入を取り決めた。満員の電車やバスでの通勤が感染拡大の原因になる懸念があるためだ。ただ、被用者には雇用主から受けた在宅勤務提案を受け入れる義務がない。
出勤勤務体制をやむを得ず継続する企業については、連邦労働省が順守すべきルールを省令化した。差し当たり3月15日までの時限措置として1月27日付で施行されている。
具体的には工場など同一空間内で複数の社員が働く場合、1人当たりの面積を原則的に最低でも10平方メートル確保しなければならなくなった。業務の性質上これを順守できない場合は換気やシールド設置などの感染防止策を施さなければならない。また、従業員数10人超の事業所では被用者を可能な限り小さなグループに分けたうえで、グループ間の接触を最小限に抑える措置を取らなければならない。可能であれば勤務時間をずらし同時間帯に勤務する社員の数を減らすことも求められる。これは通勤中の感染リスクを引き下げることにもつながる。
10平方メートルの最低面積確保も、換気やシールド設置など他の感染防止策も実施できない企業は社員にOPマスクないしFFP2マスクを提供しなければなない。社員は支給されたマスクの着用を拒否できない。
企業が同省令で定められた規則を順守しているかどうかをチェックするため、労働監督当局は立ち入り調査を実施する。違反企業には最大3万ユーロの制裁金が科される。