三菱重工業は22日、同社と蘭石油大手シェルなど4社がドイツ北部のハンブルク州で水素プロジェクトを推進することで基本合意したと発表した。再生可能エネルギー由来の電力を用いて環境に優しいグリーン水素を製造・供給・利用する事業の可能性を共同で検討する。水素経済実現に向けた取り組みで世界をリードする欧州で日本企業が大きな一歩を踏み出した。
三菱重工とシェル、スウェーデンのエネルギー大手バッテンフォール、ハンブルク熱供給公社の4社はコンソーシアムを結成。同州のモーアブルク地区にあるバッテンフォールの石炭火力発電所跡地に欧州最大級となる100メガワット(MW)規模の水電解プラントを建設する。また、将来の拡張を視野に入れ、同拠点を二酸化炭素(CO2)排出など環境負荷の少ないクリーンエネルギーの中心地「グリーンエネルギーハブ」として発展させていく。
4社はさらに、◇電力、熱、輸送などのセクターを連携させエネルギーの需供を最適化させる「セクターカップリング」◇再生エネ電源をベースに、将来的にどの程度のクリーンエネルギーを生産・供給できるか――の検討も行う。2025年の水素製造プラント完成と運転開始を見込む。
モーアブルクの拠点は送電インフラが充実しているうえ、周辺の港湾に海外の船舶が停泊することから船舶向けに水素・アンモニアを供給しやすいというメリットがある。グリーン水素の潜在需要が周辺地域で多いこともあり、生産から貯蔵、輸送に至る包括的な水素バリューチェーン構築に適していると目される。4社は欧州連合(EU)の公的助成の枠組みである「欧州の共通利益に適合する重要プロジェクト(IPCEI)」に基づく公的補助を1-3月期中に申請する予定だ。
三菱重工は同プロジェクトで水素製造に関する技術・エンジニアリング分野を担う。また、需給を最適化するため、デジタル技術を活用したメンテナンス・サービスの提供を検討する。さらに、産業顧客の水素活用プロセス最適化や地域暖房インフラへの水素製造設備の統合も担当する。
三菱重工の細見健太郎常務執行役員(エナジードメイン長)は「ハンブルクの産業構造にしっかりと組み込まれたグリーン水素ハブを構築することで、水素経済が現実のものであり、エネルギーシステムや重工業における脱炭素化に大きく貢献することをヨーロッパや世界に示しうるでしょう」とプロジェクトの意義を強調した。