モバイル勤務の導入、事業所委の同意は必要か

従業員の社内代表機関である事業所委員会(Betriebsrat)は法律ないし(業界の)労使の取り決めがない限りにおいて、事業所内の様々な案件について共同決定権(Mitbestimmungsrechte)を持つ。これは事業所体制法(BetrVG)87条1項に記されたルールである。では在宅勤務などの導入も共同決定権の対象となるのだろうか。この問題に絡んだ係争でヘッセン州労働裁判所が6月に決定(訴訟番号:5 TaBVGa 74/20)を下したので、ここで取り上げてみる。

裁判は新型コロナウイルスの感染拡大を受けてモバイル勤務を導入した企業の事業所委員会が同社を相手取って起こしたもの。同社は希望する被用者にモバイル勤務を認めることを決定した。その際、事業所委の同意を得ていなかったことから、同委は仮差し止めを求めて提訴した。

一審のダルムシュタット労働裁判所と二審のヘッセン州労裁は原告の訴えをともに退けた。決定理由でヘッセン州労裁は、被用者の労務提供の種類、範囲、内容を雇用主は命令権の枠内で自由に決定できると指摘。モバイル勤務モデルの導入は被用者の労働義務を具体化するものであり、事業所委員会の共同決定権の対象とならないと言い渡した。抗告は認めなかった。

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