金属労使が合意、構造転換などで経営不振の企業に配慮

自動車や機械、電機など金属業界の雇用者団体ゲザムトメタルと労働組合IGメタルはノルトライン・ヴェストファーレン(NRW)地区を対象とする新協定の交渉で3月30日に妥結した。合意内容は賃上げや労働時間の短縮を求める労働者と、コロナ禍と経済の構造転換に直面する企業にともに配慮するもので、経営状態の悪い企業は人件費負担が軽減できる仕組となっている。協定の適用期間は今年初から来年9月までの21カ月。他の地区の労使はNRWの協定をベースに同様の合意をする見通しだ。

IGメタルは4%のベア要求を掲げて交渉に臨んだ。これに対しゲザムトメタルは、賃上げは経営状態の悪い企業にとって負担が重く、人員削減の拡大につながると反論。一時金350ユーロの支給を回答した。両社の主張が大きく食い違っていたことから、交渉は長期化。IGメタルは警告ストライキを実施し、経営側に圧力をかけていた。

今回の合意では(1)一時金を今年6月に一律500ユーロ支給(2)来年からは一時金を2月に毎年、支給する――ことを取り決めた。2月支給の一時金は「構造転換一時金」と命名されており、原則的に来年(今年7月~来年2月までの8カ月分)は月給の18.4%相当額、再来年(3月~2月の12カ月分)からは同27.6%が支給される。

構造転換一時金は月に換算すると月給の2.3%に相当する。企業は無期限で支給しなければならないものの、各社の労使が合意すれば支給せず、代わりに勤務時間を短縮することができる。自動車業界に到来した「CASE」と呼ばれる巨大な構造転換で受注が減った企業などはこのルールを活用することで、人件費を削減するとともに解雇を回避できる。

月収の一定比率を手当(略称T-ZUG A)として年に1度、支給するルールは2018年の労使協定で導入された。これにより、子どもや要介護家族がいる被用者とシフト勤務の被用者は19年から、T-ZUG A(当時は月収の27.5%相当額)を取得する代わりに、年8日間の有給休暇を取ることができるようになった(金銭の受け取りか有給取得かの選択権がある)。労使は今回、T-ZUG Aを構造転換一時金へと発展させ、一定条件を満たす個々の被用者に認められていた有給休暇への転換権を労使の合意により全社員に拡大できるようにした。

T-ZUG Aを労使がすでに取り決めている他のルールと併用すると、週労働時間を現在の35時間(NRWなど西部地区。東部地区は38時間)から32時間へと3時間、短縮することが可能になる。これにより、週の労働日数を5日から4日に短縮することも可能になる。

18年の労使協定では各被用者に年およそ400ユーロの手当(T-ZUG B)を支給することも取り決められた。今回の協定では、売上高純利益が2.3%以下になった企業に対し、被用者の同意がなくてもT-ZUG Bの支給延期を認めるルールを取り決めた。同ルールの適用後6カ月が経過しても厳しい経営状況が続く場合は支給自体を取りやめることもできる。

今回の協定は労使の利害をバランス良く調整したものと目されている。ゲザムトメタルのシュテファン・ヴォルフ会長は「景気後退とコロナ・パンデミックという難しい条件下で良い解決策を見つけた」と明言した。

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