EU共通のインド太平洋戦略策定へ、中国念頭に積極関与

欧州連合(EU)は19日の外相会合で、EU共通のインド太平洋戦略を策定することで合意した。同地域で影響力を強める中国を念頭に、日本やオーストラリアなど「EUと同じ考えを持つ国々」との連携を強化し、経済や安全保障の面でEUとしての存在感を高める狙いだ。

EU内ではフランスやドイツ、オランダが昨年までにそれぞれ独自にインド太平洋戦略をまとめている。EU共通戦略の構想はこれら3カ国の主導によるもので、特に2022年上半期にEU議長国となるフランスが策定に強い意欲を示していた。

EUは総括文書で「民主主義や法の支配、人権、国際法を推進し、EUとしてインド太平洋地域での存在感を強める」と表明。同地域では「貿易や安全保障上の緊張が高まり、地政学的な競争が激しさを増して、人権も脅かされている」と指摘した。名指しは避けたものの、中国を強く意識した内容となっている。こうした動きは地域の安定を脅かし、EUの利益も損なうとして、地域のパートナー国との協力関係を深めて国際秩序の維持に努める方針を示した。

加盟国は9月までにボレル外交安全保障上級代表と欧州委員会に具体策をまとめるよう求めている。

EUは2020年末に中国と投資協定を結ぶことで大筋合意したが、香港や少数民族ウイグル族の人権問題や南シナ海での動きなどを巡り中国への警戒を強めている。EU内でも対中政策に温度差があり、中国と経済的な結びつきが強い東欧の一部加盟国はインド太平洋戦略の策定に慎重な構えを見せている。このため加盟国が足並みを揃えて戦略を策定・実行できるかは不透明だ。

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