新型コロナウイルスの感染第3波が終息した。新規感染者数はここ1カ月余りで大幅に減少。店舗営業などの規制も各地で緩和され、日常生活と経済活動は正常化に向かっている。順調に行けば、感染者数が多い地域に全国一律で厳しい制限措置を課す「緊急ブレーキ」ルールは今月末で打ち切られる見通しだ。
ロベルト・コッホ研究所（RKI）の5月26日の発表によると、人口10万人当たりの直近7日間の新型コロナウイルス新規感染者数（7日間の発生数）は前日の58.4人から46.8人へと低下した。50人を下回るのは昨年10月20日（48.6人）以来で、実に7カ月ぶり。ドイツでは新規感染者数が4月末から急速に減り続けており、6月1日現在で35.2人となっている。直近の底である5月31日の35.1人からやや増加したものの、水準は低い。RKIのロタール・ヴィーラー所長は1日の記者会見で「感染第3波は砕かれた」と述べた。
7日間の発生数は新型コロナの感染状況の判断で重視されている数値。50人を超えると「危険地域」に指定される。直近のピークに当たる4月26日には169.3人を記録し、国内412地域のうち405地域が50人超、356地域が100人超となっていた。
だが、その後は急速に減少し、5月14日には96.5人と100人を下回った。それからわずか12日で50人未満まで低下したことになる。現在はピーク時の約5分の1にとどまる。50人を超えるのは75地域（31日時点）まで減少した。100人を超えるのは3地域に過ぎない。
背景にはワクチン接種と春の進展がある。冬に比べ気温が高いことから人々は友人などと会う際に感染リスクの低い屋外を利用するようになっている。ワクチン接種を完了した人は31日時点で17.6％、少なくとも1度目を終えた人は42.5％に上る。
1日時点の7日間の発生数を州別でみると、最も少ないのはメクレンブルク・フォーポマーンで14人となっている。シュレスヴィヒ・ホルシュタインとブランデンブルクもそれぞれ17人、18人にとどまる。26日時点ではノルトライン・ヴェストファーレン（52人）、ヘッセン（53人）、バーデン・ヴュルテンベルク（59人）、ザールラント（62人）、テューリンゲン（70人）の5州で50人を超えていたが、現在は国内16州すべてで50人を下回っている。
消費者信頼感が大幅改善
市場調査大手GfKが27日発表したドイツ消費者信頼感指数の6月向け予測値はマイナス7.0ポイントとなり、5月の確定値（－8.6ポイント）から1.6ポイント改善した。新規感染者数が大幅に減り、感染防止のための制限措置が各地で緩和されていることが反映された格好。ワクチン接種が進展していることもあり、景気の先行きを楽観する消費者が増えている。
新規感染者数が100人未満の地域では緊急ブレーキ規制が解除される。このため国内の多くの地域ではすでに小売店やサービス事業者の店舗営業が制限付きながら再開されている。
ドイツ経済はこれまで、コロナ規制の直撃を受けない製造業が支柱となってきた。小売店とサービス事業者の営業が正常化すれば個人消費も回復し、経済が大きく上向くことから、今回の調査では消費者信頼感指数の算出基準となる3つの指数のうち2つの指数が大幅に改善した。特に景気の見通しに関する5月の指数は前月の7.3ポイントから41.1ポイントへと急上昇し、2018年3月以来3年2カ月ぶりの高水準に達した。
所得の見通しに関する5月の指数も9.3ポイントから19.5ポイントへと改善した。小売店などで働く被用者は営業再開で所得を以前の水準に回復できる可能性があることが背景にある。
高額商品の購入意欲に関する5月の指数は前月の17.3ポイントから10.0ポイントへと低下した。同指数の悪化は4カ月ぶり。営業規制は緩和され始めたものの、サービス分野を中心に消費の可能性が依然として制限されていることが響いたもようだ。
消費の機会が限られることから、1-3月期の貯蓄率は過去最高の23.2％に達した。コロナ禍の全期間を通しても約16％と極めて高く、家計のゆとりは増えている。個人消費は今後、反動で急増する可能性が高い。
緊急ブレーキは新規感染者数の急増を受け4月下旬に導入された。6月末までの時限措置となっている。メルケル首相はこれを踏まえ5月31日、延長せずに済みそうだと語った。感染が再び大きく拡大しない限り、予定通りに失効させる意向だ。
