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2021/6/9

経済産業情報

ドイツのNO2濃度規制違反をEU裁が認定

この記事の要約

ドイツは欧州連合(EU)の大気質指令に違反しているとして欧州委員会が提訴していた裁判でEU司法裁判所(ECJ)は3日、訴えを認める判決を下した。判決理由で裁判官は、同国の多くの地域で系統的・持続的に二酸化窒素(NO2)の […]

ドイツは欧州連合(EU)の大気質指令に違反しているとして欧州委員会が提訴していた裁判でEU司法裁判所(ECJ)は3日、訴えを認める判決を下した。判決理由で裁判官は、同国の多くの地域で系統的・持続的に二酸化窒素(NO2)の許容上限値を上回っていたうえ、速やかに是正策が取られなかったと認定した。ドイツは今回の判決に従わずNO2規制に今後も違反し続けた場合、制裁金を科されることになる。

EU加盟国はNO2の濃度を1立方メートル当たり年平均40マイクログラム以下に抑制することを2010年以降、義務づけられている。また、1時間当たり200マイクログラムを超過する回数も年18回が許容上限となっている。

ドイツはこれらの規制を当初から順守していなかったことから、欧州委は違反が恒常化している状態を問題視し、EU法違反調査手続きを2015年に開始。17年2月には独政府に最終警告書を送付し、順守に向けた対策が早急に作成・実施されなければ、ECJに提訴する意向を示していた。適切な対策が取られなかったことから、10年1月1日~16年末の違反を対象に18年5月に裁判を起こした。

ECJは今回の判決で、◇ベルリン、シュツットガルト、デュッセルドルフなど26都市でNO2の濃度が系統的・持続的に年許容上限を上回っていた◇シュツットガルトとライン・マイン地区では1時間当たりの許容濃度超過回数規制にも系統的・持続的に抵触していた――と認定。順守に向けた適切な取り組みも行わなかったとして大気質指令に違反したとの判断を下した。

自動車を対象とする欧州排ガス規制「ユーロ5」に定めるディーゼル車のNO2排出基準が甘いことが同指令を順守できない原因だとするドイツ政府の反論に対しては、NO2の排出源は自動車だけでないと指摘。自動車排ガス規制を理由に有害物質濃度規制の順守義務が免除されることはないとの判断を示した。

ドイツではNO2規制に反する地域が16年時点で90カ所に達していた。その後は国内裁判所の命令や当該都市の改善措置により減少。19年には25カ所まで減った。20年はコロナ禍で交通量が大幅に減ったことからミュンヘンやハンブルクなど6カ所にとどまっている。