欧州委が独への法的手続き開始、量的緩和違憲判決で

欧州連合(EU)の欧州委員会は9日、ドイツの連邦憲法裁判所が欧州中央銀行(ECB)の量的金融緩和策に一部に問題があるとの判断を下したことについて、「EU法の基本原則に反する」として、法的手続きに着手したと発表した。欧州司法裁判所が量的緩和を認めたにもかかわらず、加盟国の裁判所が異論を唱えたことを問題視している。

問題となっているのは、ECBが2015年から実施している量的金融緩和のうち、ユーロ圏の国債を各国の中央銀行を通じて買い取る措置。欧州裁は18年に認めたが、独憲法裁は2020年5月、ECBが同措置を決めた際のドイツ政府と連邦議会の対応に問題があるなどとして、同国の憲法に違反するという判決を下した。EU加盟国の裁判所が欧州裁の決定に反旗を翻すのは初めだった。

最終的にECBによる国債購入が差し止められることはなかった。しかし、欧州委は独憲法裁の決定が、EU法が加盟国の法律より優位にあるという原則に反すると指摘。悪しき前例を作ってはならないとして、ドイツ政府に通知書を送付し、説明を求める。

通知書の送付は法的手続きの第1段階となるもので、ドイツ政府は2カ月以内の回答を求められる。欧州委が回答内容を不十分と判断すれば、欧州裁に提訴することになる。

ドイツ政府の報道官は同日、欧州委が提起した問題に留意すると述べるにとどまり、踏み込んだコメントは避けた。

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