ドイツ経済が明るさを増してきた。新型コロナ危機からの回復を支える柱はこれまで製造業に限られていたが、ここにきて小売・サービス業界を取り巻く環境が改善。労働市場も活性化していることから、成長エンジンはフル稼働状態に近づく見通しだ。
Ifo経済研究所が24日発表した6月のドイツ企業景況感指数(2015年=100)は101.8となり、18年11月以来2年7カ月ぶりの高水準に達した。新型コロナウイルスの新規感染者が大幅に減り、感染防止のための規制の緩和が進んでいることが背景にある。Ifoのクレメンス・フュスト所長は「ドイツ経済はコロナ危機を払い落とした」と明言した。
現状判断を示す指数は99.6となり、前月を3.9ポイント上回った。直近の底である1月(89.4)に比べると10.2ポイント改善している。今後6カ月の見通しを示す期待指数も1.1ポイント増の104.0へと上昇した。
部門別でみると、製造業の景況感は18年4月以来2年2カ月ぶりの高水準に達した。ほぼすべての業種で改善。機械と電機は特に良好だった。世界経済の急回復に伴う原料や部品不足は大きな懸念材料となっている。
サービス業では現状判断と期待指数がともに大きく改善した。物流とITサービスが全体をけん引している。コロナ規制の直撃を受けた飲食・宿泊業も含めて売り上げの大幅増を見込む企業が多い。
景況感は流通業でも大きく改善した。上昇幅は現状判断で特に大きい。小売では店舗営業規制緩和の効果が鮮明になっている。
建設業の景況感は小幅な上昇にとどまった。先行き見通しは改善が続いているものの、建材不足の深刻化を懸念する企業が多い。
個人消費は下期に急回復
一方、市場調査大手GfKが25日発表したドイツ消費者信頼感指数の7月向け予測値はマイナス0.3ポイントとなり、昨年9月以降の最高を記録した。6月の確定値(-6.9ポイント)からの改善幅は6.6ポイントと大きい。新型コロナの新規感染者数の大幅減、感染防止策の緩和とワクチン接種の進展などを受け、先行き見通しは明るさを増しており、GfKは「2021年下半期の個人消費が大きく回復するのはほぼ確実だ」との見方を示した。
景気の見通しに関する6月の指数(消費者信頼感指数の7月向け予測値の算出基準の1つ)は前月を17.3ポイント上回る58.4ポイントとなり、11年2月以来の高水準に達した。改善幅は前月も33.8ポイントと大きく、景気の楽観的な見方は急速に強まっている。
所得の見通しに関する6月の指数(同)も14.6ポイント増の34.1ポイントとなり、同国でコロナ禍が始まった昨年3月以降の最高を記録した。飲食店や小売店の店舗営業規制緩和が進み、これまで国の操短手当を受給してきた従業員が仕事に復帰していることが大きい。
高額商品の購入意欲に関する6月の指数(同)は3.4ポイント増の13.4ポイントと、他の指数に比べ改善幅が小さかった。厳しいコロナ規制をなおも受けている業界があることや、店舗でのマスク着用義務が解除されていないことが響いているもようだ。
景気回復のすそ野が広がったことで、雇用の拡大に乗り出す企業が増えてきた。Ifoが29日に発表した6月の雇用指数(15年=100)は103.7となり、18年12月以来2年半ぶりの高水準に達した。同指数の増加は4カ月連続。直近の底である2月からの改善幅は計9.1ポイントに上る。
Ifoは企業景況感調査の一環で企業に雇用計画を質問。「今後3カ月以内に雇用を拡大する」との回答から「縮小する」との回答を引いた数(DI)を算出したうえで、15年平均を100として指数化している。DIは0ポイントを超えると雇用の拡大、下回ると縮小を意味する。
各業界のDIをみると、製造業は8.6ポイントとなり、前月の4.0ポイントから一段と増加した。雇用拡大の動きは特に機械と電機で活発化している。
サービス業は9.3ポイントから19.2ポイントへと伸びた。人材派遣がけん引車となっており、コロナ禍で削減した派遣社員の採用を再び拡大する動きが強まっている。
DIは流通業でも3.5ポイントから7.6ポイントへと上昇した。プラスの領域にとどまるのは3カ月連続。建設業は4.5ポイントで、前月(2.7ポイント)を1.8ポイント上回った。