欧州経済の中心地ドイツに特化した
最新の経済・産業ニュース・企業情報をお届け!

2021/7/7

総合 - ドイツ経済ニュース

デルタ株が感染防止策の焦点に、感染比はすでに推定50%以上

この記事の要約

感染力が特に高い新型コロナウイルスのデルタ型変異株(インド株)が感染拡大防止対策の最大の焦点となっている。ドイツの新規感染者数は低水準で推移しているものの、ここ数日は底打ち傾向が出ており、増加に転じるのは時間の問題とみら […]

感染力が特に高い新型コロナウイルスのデルタ型変異株(インド株)が感染拡大防止対策の最大の焦点となっている。ドイツの新規感染者数は低水準で推移しているものの、ここ数日は底打ち傾向が出ており、増加に転じるのは時間の問題とみられる。当局は大幅増加を回避するため、市民に慎重な行動を促すとともに、ワクチン接種戦略を一部修正した。

人口10万人当たりの直近7日間の新規感染者数は3日に4.9人となり、約11カ月ぶりに5人を下回った。だが、その後は5.0人と4.9人が交互に続いており、ひとまず下げ止まっている。デルタ株が主流となったことが背景にあるとみられる。

ロベルト・コッホ研究所(RKI)が6月30日に発表した変異株に関するレポートによると、今年第24週(6月14~20日)の新規感染者に占めるデルタ株の割合は36.7%となり、前週(17.0%)の2倍以上に拡大した。現在のデータをもとに試算すると、第26週(6月28日~7月4日)には少なくとも50%に達し、これまで主流だったアルファ型変異株(英国株)を抜いて感染の主流となっている。

デルタ株はアルファ株とともに、伝染力や重症化率が高くワクチンの効果も落ちる「懸念される変異株(VOC)」に分類されているが、感染力はアルファ株を上回る。このためデルタ株に感染する人の割合が高まるにつれてアルファ株の割合は低下。第24週は54.9%となり、前週の74.4%から約20ポイント下がった。ピーク時の第20週(5月17~23日)には91.2%に達していた。

州レベルのデータを見ると、ブレーメン、ハンブルク、ヘッセン、メクレンブルク・フォーポマーン、シュレスヴィヒ・ホルシュタインの5州では第25週(6月21~27日)の時点で50%以上となっている。

イエン・シュパーン保健相は1日の記者会見で、デルタ株は近日中にドイツ全体で主流になると述べたうえで、感染者の絶対数を低く抑えることが重要だと強調。「デルタ株にチャンスを与えるかどうかは我々にかかっている」と述べ、感染防止に引き続き注意を払うよう市民に呼びかけた。

アストラゼネカ製ワクチン、2回目は他社製品に変更

デルタ株が急速に広がっていることを受け、RKIの予防接種常任委員会(STIKO)は1日、新型コロナウイルス用ワクチンの接種勧告を部分修正した。アストラゼネカ製ワクチンの接種を1回目に受けた人に2回目は伝令RNA(mRNA)を用いた他社製のワクチンを接種するよう勧告している。これにより感染防止効果を高める狙いだ。

ドイツでは現在、mRNA型のビオンテック/ファイザー製品、モデルナ製品と、ウイルスベクター型のアストラゼネカ製品、ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)製品が接種されている。このうちJ&J製品は1回接種タイプで、残り3製品は2回の接種が必要。STIKOはこの3製品の接種間隔をビオンテック/ファイザーで3~6週間、モデルナで4~6週間、アストラゼネカで9~12週間とするよう勧告している。アストラゼネカに関しては最短4週間とすることも可能だが、間隔を短くすると効果が落ちることら、医師の説明と本人の同意が必要となる。

3製品は1回目の接種では予防効果が弱いものの、2回目の接種後14日が経過すると、デルタ株を含むVOCに対しても高い効果を発揮することが分かっている。STIKOはこの知見と、デルタ株の急速な拡大を踏まえ今回、勧告を部分修正した。アストラゼネカの接種を受けた人が2回目にmRNAワクチンの接種を受ける場合は間隔を最短4週間に短縮しても高い効果が得られるためだ。接種間隔を9~12週間から短縮することで、感染リスクを下げることができる。感染防止効果はmRNAワクチンの接種を2回受ける場合よりも高い。

STIKOはこれまで、1回目にアストラゼネカのワクチンを接種した60歳未満の人についてのみ、2回目はmRNAワクチンに変更するよう勧告してきた。これは比較的低い年齢層でアストラゼネカ製ワクチンの接種後に血栓ができるリスクがあることが接種キャンペーンの開始後に判明したためで、デルタ株の流行とは関係がない。今後は60歳以上のアストラゼネカ製品接種者も2回目はmRNAワクチンの接種を受けることになる。

一方、健康保険医師会全国連盟(KBV)のアンドレアス・ガッセン会長はdpa通信に、開業医のワクチン不足が7月5~11日の週(第27週)から解消される見通しを明らかにした。これまでは供給量が開業医の発注量を下回っていた。ドイツ全体のワクチン供給量が今月から大幅に増え始めたうえ、バカンス旅行に出かける患者と開業医が多くなってきたことが背景にある。ただ、順番を待つ患者は極めて多いことから、すべての希望者がすぐに接種を受けられるわけではない。