新型コロナウイルス用ワクチンの接種を受けた人などに共通の証明書を発行し、欧州連合(EU)域内を自由に移動できるようにする制度の運用が1日、正式に開始された。感染力の極めて高いデルタ変異株の感染拡大が懸念されるなか、バカンスシーズンの本格化に合わせて観光の正常化に舵を切った。
同制度はEU各国が観光客など不要不急でない旅行者も安全に配慮しながら受け入れるようにするのが目的。「EUデジタルCOVID証明書」と呼ばれる証明書をワクチン接種者とPCR検査で陰性の人、コロナに感染して回復した人に無料で発行する。証明書はスマートフォンなどに保存されるデジタル方式と紙方式の両方で取得可能で、各国が取得者の入国時にQRコード化されたデータ(氏名、生年月日、接種したワクチンの種類、接種日や検査の記録など)をチェックする仕組みだ。非EU加盟国のスイス、ノルウェー、アイスランド、リヒテンシュタインも参加する。
EUでは6月末までに観光立国のドイツ、フランス、イタリアなど21カ国が導入していた。1日に残る国が導入し、本格的な運用が始まった。
証明書を持つ人は、入国時のPCR検査、入国後の一定期間の隔離は原則的に不要となるが、変異したウイルスによる感染の急増などで各国が必要と判断すれば実施する権限を持つ。また、ある国からの渡航を証明書保有者であっても制限できる。
EUはコロナ禍で大打撃を受けた観光業の復興を進めるため、域外からの渡航もワクチン接種を条件に受け入れることを5月に決定した。また、感染状況が落ち着いている国を「安全な国」と認定し、ワクチン接種の有無にかかわらず観光目的でも入域できるようにしている。1日にはカナダ、サウジアラビア、ヨルダン、カタール、アルメニアなど9カ国を新たに対象国のリストに加えた。これによって対象国は日米を含む23カ国に拡大した。