独緑の党のアンナレーナ・ベアボック首相候補(共同党首)は独仏メディアの共同インタビューで、9月の連邦議会選挙で第一党の座を争う与党のキリスト教民主・社会同盟(CDU/CSU)を激しく批判した。同首相候補は副収入報告の提出遅延や経歴詐称が響いて人気が急落。党の支持率もCDU/CSUに逆転され差を拡げられていることから反撃に出た格好だ。
CDU/CSUが打ち出した選挙公約を、ドイツの政治を1990年代へと後退させ、社会を分断させると斬り捨てた。具体的にはCDU/CSUが企業減税を行うとともに、「債務ブレーキ」と呼ばれる公的債務抑制ルールへの早期復帰を打ち出していることを批判している。歳入不足に陥り、学校や病院のデジタル化や、温暖化対策の加速に向けた資金を捻出できなくなり、若い世代がしわ寄せを受けることになるとの見方だ。
ベアボック氏に対しては新たに批判が出ている。選挙に向けて出版した著書『今:我々はこの国をどう刷新するのか』のなかに他人の著作・論文からの無断引用が40カ所以上、含まれているとオーストリアのメディア学者が指摘したのだ。緑の党はこれに対し、広く認知されている事実を挙げたに過ぎず、無断引用には当たらないと反論している。調査レポートの表現を同著で断り書きなしに引用された環境政策シンクタンク、アゴラ・エネルギーヴェンデのパトリック・グライヒェン所長も5日、無断引用に当たらないとの見解を表明した。
今回の選挙戦ではベアボック氏に対する揚げ足取りが目立ち、実のある政策論争が妨げられる。ヴァルター・シュタインマイヤー大統領は公共放送ZDFの4日のインタビューで、「泥仕合に発展する恐れがある」と懸念を表明。状況がさらに悪化した場合は大統領として注意を促す考えを示した。すべての政党に対し「節度と理性」を呼びかけている。