欧州連合(EU)の欧州医薬品庁(EMA)は6日、新型コロナウイルスワクチンの追加接種について、現時点では3回目の接種を推奨するための十分なデータが揃っていないと表明した。ワクチンの普及が進む中東や欧州諸国が相次いで追加接種の方針を打ち出すなか、EMAはブースター接種の必要性やタイミングについて的確に判断するため、メーカー側と協議してデータ収集に努めていると説明している。
米ファイザーは7月下旬、3回目のブースター接種により、感染力が強いデルタ型変異ウイルスに対し、2回だけの場合と比べて高齢層で最大11倍の抗体が得られたと発表した。同社は7月初めにも、2回目の接種から半年後に追加接種を行った場合、従来型やベータ型に対する抗体が5倍~10倍多くなることが確認されたとして、ブースター接種で高い予防効果を長期にわたり維持できると説明していた。
これを受け、イスラエルは今月1日から60歳以上を対象に3回目の接種を開始。英国やドイツ、フランスなども高齢者や基礎疾患のある人を対象に、9月から追加接種を行う方針を相次いで打ち出した。
一方、世界保健機関(WHO)は4日、途上国などでのワクチン接種を進めるため、9月末まで追加接種を行わないよう呼びかけた。テドロス事務局長は記者会見で「デルタ型変異ウイルスから自国民を守るための各国政府の懸念は理解するが、世界で最も脆弱な人々が守られないまま、ワクチン接種が最も進んでいる国々でさらに多くのワクチンが使われることは容認できない」と強調。「すべての国で少なくとも人口の10%にワクチンが行き渡るよう、9月末まで追加接種を見送るよう求める」と述べた。
EMAは7月中旬の段階で、追加接種について判断するにはさらなるデータが必要と表明していた。デルタ型の広がりによる感染拡大への対応とワクチンの平等な配分をめぐる議論が高まるなか、今回改めて「現時点でワクチンによる予防効果がどの程度持続するかについて正確に理解するための十分なデータが揃っておらず、ブースター接種が必要かどうか、どのタイミングで必要かなどを判断するのは時期尚早だ」と説明した。