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2021/9/15

総合 - ドイツ経済ニュース

SPD首相候補の優位変わらず、CDU/CSUと緑の党候補も評価は上昇

この記事の要約

キリスト教民主・社会同盟(CDU/CSU)、社会民主党(SPD)、緑の党がそれぞれ担ぎ出した次期首相候補3人のテレビ討論会が12日、行われた。首相候補の討論会は8月末に続いて2度目。SPDのオーラフ・ショルツ候補(連邦財 […]

キリスト教民主・社会同盟(CDU/CSU)、社会民主党(SPD)、緑の党がそれぞれ担ぎ出した次期首相候補3人のテレビ討論会が12日、行われた。首相候補の討論会は8月末に続いて2度目。SPDのオーラフ・ショルツ候補(連邦財務相)の優位は揺るがなかったものの、CDU/CSUのアーミン・ラシェット候補(CDU党首、ノルトライン・ヴェストファーレン州首相)はショルツ氏を攻撃してポイントを獲得。緑の党のアンナレーナ・ベアボック候補は冷静な姿勢を保ち評価を上げた。

9月26日に行われる連邦議会選挙に向けた政党間の戦いで、当初は緑の党、次はCDU/CSUが優勢だった。だが、8月以降はショルツ候補の人気急上昇を追い風にSPDが支持率トップを獲得。第一党となる可能性が高まっている。

これまで第一党だったCDU/CSUの危機感は大きく、ラシェット氏は今回の討論で、SPDと緑の党に急進左派の左翼党を加えた3党が次期政権を握る恐れがあるとして中間層の危機感を煽るとともに、ショルツ氏を批判。特に、マネーロンダリング絡みの捜査で9日に連邦財務省を対象とする検察の立ち入り捜査が行われたことなどを執拗に取り上げ、責任を追及した。選挙に敗れると野党に転落し、自らの政治生命も絶たれかねないという危機感が、普段はやや頼りなげな笑みを浮かべるラシェット氏を攻撃モードへと転換させた。

ベアボック氏はCDU/CSUとSPDからなる現政権を批判。緑の党が政権を獲得した場合は炭素中立の実現に向け温暖化対策を加速させる意向を示した。石炭発電の全廃時期については現行計画の「2035~38年」から「30年まで」に前倒しする考えだ。他候補に対する攻撃は差し控えた。

論戦を視聴した有権者を対象に世論調査機関ヴァーレンが実施したアンケート調査では、論戦の勝者をショルツ氏とみる回答が最も多く、32%に上った。これにベアボック氏が21%、ラシェット氏が20%で続いた。回答者を性別でみると、男性ではショルツ氏(36%)が最も高かったのに対し、女性ではベアボック氏(29%)がショルツ氏(28%)を抑えて1位となった。

年齢別でみても、ベアボック氏は18~34歳の若年層で52%を獲得し、断トツの1位となった。緑の党は若い世代の支持率が際立って高いことが背景にある。35~59歳と60歳以上ではショルツ氏がトップだった。

ベアボック氏は親近感でトップに

ベアボック氏を「思っていたよりも良かった」とする回答は53%に達し、「思っていたより悪かった」は8%にとどまった。弁論に長けていることや感情的にならなかったことが評価されたもようだ。ラシェット氏も闘争的な姿勢を強く打ち出したことが評価されたもようで、「思ったよりも良かった」が35%と「悪かった」(12%)を大きく上回った。

ベアボック氏は、「最も親近感を感じた候補は誰ですか」との質問でも39%を獲得してトップとなり、2位のショルツ氏(28%)に大きく差をつけた。「最も信頼できる候補」と「物事の理解力が最も高い候補」ではショルツ氏が1位を獲得している。

「最も首相になってほしい候補」ではショルツ氏が46%で1位を保った。2位はラシェット氏で28%、3位はベアボック氏で20%にとどまっている。ただ、討論直前のアンケートではショルツ氏が55%、ラシェット氏が19%、ベアボック氏が19%となっており、ラシェット氏は討論でポイントを大きく稼いだことがうかがわれる。ラシェット氏はこれまでの優柔不断な姿勢を改めたことで、中道右派の有権者の支持を一定程度、取り戻したとみられる。

ショルツ氏は財務省への立ち入り調査や金融大手ワイヤーカードのスキャンダルでの監督責任をラシェット氏に追及された際、視聴者に誤った印象を与えようとしていると反論した。ラシェット氏の発言には事実、ショルツ氏を陥れようとする意図があり、発言内容にも誤りがあったが、普段はポーカーフェイスを保つショルツ氏は明らかに苛立っていた。これが討論後の同氏の評価低下につながった可能性がある。

親近感で高い評価を得たベアボック氏を次期首相として支持する有権者が少ない背景には、男性と中高年齢層の信頼感を獲得できていないことがあるもようだ。

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