半導体大手の独インフィニオンは17日、オーストリア南部のフィルラハでパワー半導体工場の開所式を行った。半導体は現在、世界的に不足し、コロナ禍からの経済回復の足取りを鈍らせており、ラインハルト・プロス社長は「欧州に(半導体の)新たな生産能力を創設する最善のタイミングだ」と強調した。欧州連合(EU)は域内の半導体自給方針を打ち出しており、式典には欧州委員会のティエリー・ブルトン委員(域内市場担当)が参列した。
インフィニオンは2018年に同工場の建設計画を打ち出した。投資総額は16億ユーロ。すでに8月初旬に操業を開始しており、19日までに出荷をスタートさせた。
まずは主に自動車、データセンター、ソーラー・風力発電設備向けに供給する。生産能力を今後、段階的に引き上げていき、5~6年後には同工場の売上高が年およそ20億ユーロに達すると見込んでいる。雇用規模は400人。
パワー半導体は電力を調整する電子デバイスで、消費電力と二酸化炭素(CO2)排出の抑制に寄与する。同工場で生産する製品を利用することで、CO2排出量を年1,300万トン以上、削減できるという。これは欧州の2,000万人強が排出するCO2に相当する規模だ。
フィルラハ工場では直径300ミリのウエハーを用いて製品を製造する。これにより資源とエネルギー効率が上昇するとともに、コスト競争力が高まる。300ミリウエハーを用いるのは独ドレスデン工場に次いで2カ所目。同社は両工場を一体運営することで多様な顧客ニーズに迅速・柔軟に対応できるようにし、生産性を高める考えだ。