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2021/10/6

総合 - ドイツ経済ニュース

デジタル化推進を経済界が次期政権に要求

この記事の要約

次期政権の課題としてデジタル化の推進を挙げる企業が最も多いことが、ドイツ商工会議所連合会(DIHK)のアンケート調査で分かった。行政手続きの迅速化を求める声も強く、ペーター・アドリアン会長は「強力なデジタルインフラと迅速 […]

次期政権の課題としてデジタル化の推進を挙げる企業が最も多いことが、ドイツ商工会議所連合会(DIHK)のアンケート調査で分かった。行政手続きの迅速化を求める声も強く、ペーター・アドリアン会長は「強力なデジタルインフラと迅速な行政がなければ企業はこの国でも世界的な競争でも今後の大きな課題を克服できない」と指摘。現時点で定まっていない次期政権に対応を要求した。

DIHKは9月下旬に行われた連邦議会選挙に合わせて会員企業3,500社を対象にアンケート調査を実施した。それによると、次期政権が優先的に取り組む課題としてデジタル化の推進と答えた企業は61%に達し、断トツで多かった。これに「行政サービスの改善・迅速化」が41%で続いた。同会長は行政機関がデータを依然して紙ベースで取り扱っている旧態依然たる実態がコロナ禍で露呈したと指摘。デジタル化が遅れているために認可手続きなどの時間が極めて長いことなども挙げ、行政のデジタル化を速やかに進めるよう促した。企業が投資を迅速に行うために必要な前提条件だとしている。

ドイツの立地競争力に関する質問では、ほとんどすべての項目で前回選挙時(2017年)に比べて評価が低下した(企業は1~6で回答。評価は1が最高、6が最低)。評価が最も低かった項目は「行政」で4.8となり、前回の4.3から0.5ポイント上昇。「電力コスト」は3.7から4.5へと0.8ポイントも悪化した。今回の調査で初めて質問した「電力以外のエネルギーコスト」も4.5に上っており、エネルギーコスト高は企業の大きな負担となっている。アドリアン会長は、企業が人材・設備・環境投資を拡大するために国は電力コストや税負担の軽減に努めるべきだと訴えた。

緑の党とFDPが共同歩調

次期政権の樹立に向けては、そのカギを握る緑の党と自由民主党(FDP)の主要メンバーによる会談と、両党がそれぞれ実施した第一党の社会民主党(SPD)、第二党のキリスト教民主・社会同盟(CDU/CSU)との会談が5日までに終了した。緑の党とFDPこの結果を踏まえ、政権樹立に向けた交渉の相手をSPDとCDU/CSUのどちらかに絞り込む意向だ。

緑の党とFDPが歩調を合わせるのは、手を組まない限り両党とも政権入りを果たせないためだ。連立のシニアパートナーがSPDになるにせよCDU/CSUになるにせよ、緑の党とFDPはそれぞれの政策方針を実現するために協調せざるを得ない状況にある。協調できなければ、SPDとCDU/CSUが大連立政権を継続し、緑の党とFDPはこれまでに引き続き野党にとどまることになる。

緑の党とFDPが連立実現に向けた交渉で連携して行動するのは、両党にとってメリットが大きいためでもある。両党の合計議席数はSPDとCDU/CSUをともに上回っており、連携を保持できる限り高い交渉力を行使できる。

ただ、温暖化防止対策を強化するために富裕層の増税と財政規律の緩和を掲げる緑の党と、増税と財政規律緩和を行う政権には参加しないというFDPが着地点を見つけられるかどうかは不透明だ。また、緑の党がSDPとの連立を希望するに対し、FDPはCDU/CSUとの政策的な親近性を強調しており、政権交渉先の選定は難航の恐れがある。