欧州連合(EU)欧州委員会のフォンデアライエン委員長は1日、EU加盟国はワクチン接種の義務化を検討するべきとの考えを示した。すでに新型コロナウイルス感染が急速に再拡大している域内で、新たな変異株「オミクロン株」の流行によって状況がさらに深刻化する懸念が広がっているためだ。ワクチン接種についてはEUに権限がないことから、各国が協議し、足並みをそろえて義務化するのが望ましいとしている。
EU域内のワクチン接種率は頭打ちとなっており、66%にとどまっている。フォンデアライエン委員長は記者会見で、3分の1が未接種となっていることで感染に歯止めがかからないと指摘。ドイツで接種義務化の動きが進んでいることなどを念頭に、義務化については加盟国の協議による「共通のアプローチが必要だ」と述べた。
域内ではオーストリアが11月、2022年2月1日からワクチン接種を義務化すると発表した。欧州ではフランスなどが医療従事者にワクチン接種を義務付けているが、一般市民を対象とした義務化は初めてだ。また、ギリシャ政府は11月30日、来年1月16日から60歳以上の接種を義務化し、拒否した場合は月100ユーロの罰金を科す方針を打ち出した。ドイツでは2月から義務化される見通しだ。
EUではデルタ株による感染が急拡大し、新型コロナ感染の第4波に見舞われている。さらに、オミクロン株の感染拡大が進む。オミクロン株の感染力の強さ、既存のワクチンの有効性などは未知数だが、フォンデアライエン委員長の発言には、接種拡大によって第4波の深刻化と新変異株の感染拡大というダブルパンチを避けたいという思いがあるとみされる。
欧州委は同日、オミクロン株を含む感染拡大への対応策として、EUと各国がオミクロン株流入を食い止めるため、協調して渡航制限を毎日見直し、必要に応じて強化する方針を打ち出した。ワクチンを拒否している人に接種を働きかける活動の強化、追加接種(ブースター接種)の促進などでの協調も必要だとしている。