21年の協定賃金は実質1.4%減少、インフレ直撃

労働組合と雇用者団体・企業が取り決める協定賃金が今年は前年比で平均1.7%増(暫定値)となることが、労組系の経済・社会科学研究所(WSI)が9日に発表した調査結果で分かった。インフレ率が3.1%に上る見通しのため、実質ベースでは賃金が1.4%も低下することになる。

21年に締結された労使協定の平均ベースアップ率は1.5%にとどまった。20年以前に締結された協定に基づく今年のベアは平均2.0%で、21年と20年以前のものを合わせると平均が1.7%となる。これは06年以来15年ぶりの低水準で、20年の2.0%、19年の2.9%を大きく下回る。

21年の賃金協定ではコロナ禍の先行きが読めないことから、賃上げ幅が抑えられた。その代わりに無課税のコロナ手当を支給することを多くの業界で取り決められている。同手当の額は最低の菓子業界で90ユーロ、最高の州職員で1,300ユーロ。電機・自動車などの金属業界は500ユーロだったものの、自動車大手フォルクスワーゲン(VW)が金属労組IGメタルと独自に締結した協定では1,000ユーロに上る。

来年は協定賃金の上昇率が拡大する見通し。ただ、インフレ率は低下し、正常化に向かうことから、一部のエコノミストが指摘する賃金と物価のスパイラルは起こらないというのがWSIの見方だ。

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