ECBの量的緩和7-9月期にも終了、年内の利上げ視野に

欧州中央銀行(ECB)は10日に開いた定例政策理事会で、コロナ禍前から実施してきた「資産購入プログラム(APP)」と呼ばれる量的金融緩和策について、2022年7-9月期にも打ち切ることを決めた。ロシアのウクライナ侵攻がユーロ圏経済に及ぼす影響への懸念より、物価急上昇への対応を優先した格好だ。

ECBは12月の理事会で、ユーロ圏で景気回復が続くなか、物価が急上昇していることから、金融正常化に舵を切ることを決定。「パンデミック緊急購入プログラム(PEPP)」と呼ばれる国債、社債などの資産を買い入れる措置を3月末で終了することを決めた。

従来の資産購入プログラム(APP)に基づく毎月の買い入れは、PEPP打ち切りによる影響を緩和するため、22年4-6月期に現在の200億ユーロから400億ユーロに拡大したうえで、7-9月期には300億ユーロとし、10月以降は200億ユーロに戻す方針だった。

しかし、今回の理事会で決まった買い入れ額は、4月が400億ユーロ、5月が300億ユーロ、6月が200億ユーロで、縮小のペースが早まる。7-9月期以降に関しては、インフレ動向など状況に応じて検討し、中止しても問題がないと判断すれば同期に打ち切る。

ロシアのウクライナ侵攻で欧州経済の先行きは不透明となっており、ECBは同日に発表した最新の内部経済予測でユーロ圏の22年の成長率を3.7%とし、前回(12月)の4.2%から下方修正した。一方、このところ過去最高を更新し続けているインフレ率については、ウクライナ危機に伴うエネルギー価格の上昇などを見込み、22年を前回の3.2%を大きく上回る5.1%に引き上げた。

量的金融緩和が終了すると、政策金利の引き上げが新たな焦点となる。ラガルド総裁は理事会後の記者会見で、利上げ時期について「APPを打ち切ってからしばらくして」と述べた。APPが予定通り7-9月期に終了すると、年内の利上げもありそうだ。

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