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2022/3/23

総合 - ドイツ経済ニュース

コロナ規制ほぼ解除、州代表の参院は法案批判もしぶしぶ承認

この記事の要約

新型コロナウイルスの感染拡大防止策を大幅に緩和することを柱とする独政府与党の感染防止法改正案が連邦議会(下院)と州政府の代表で構成される連邦参議院(上院)で18日、可決された。新型コロナ感染者数の記録更新が続くなかで規制 […]

新型コロナウイルスの感染拡大防止策を大幅に緩和することを柱とする独政府与党の感染防止法改正案が連邦議会(下院)と州政府の代表で構成される連邦参議院(上院)で18日、可決された。新型コロナ感染者数の記録更新が続くなかで規制をほぼ全面的に解除することに対しては専門家や野党だけでなく、州政府と与党内からも批判が出ていたが、同法案が成立しないとコロナ規制の法的な枠組みが20日以降なくなり大きな混乱を生むことから、連邦参議院は両院協議会に持ち込むことを断念。法案をしぶしぶ承認した。

改正法が施行された20日以降は、「2G」や「3G」など接種、感染からの快復、陰性証明の提示を入店やイベント参加の条件とするルールは廃止された。また、マスク着用義務は公共交通機関や病院、介護施設などに限定され、小売店や飲食店、スポーツ観戦、文化イベントでは義務が廃止された。社会的距離ルールもなくなっている。

個々の地域で入院する感染者が大幅に増え医療がひっ迫したり、重症化リスクの高い新たな変異株が流行した場合は、それらの地域(ホットスポット)を対象とする規制強化を各州の議会が決議し、ピンポイントで対処する。2G・3Gや社会的距離ルール再導入、マスク着用義務の拡大などを実施できる。

州には移行期間が認められており、4月2日までは従来の規制を継続適用できる。多くの州は移行期間ルールを活用している。

連邦参議院では改正法案に対する批判が相次いだ。法案内容を検討する時間が州サイドにほとんど残されていなかったことや、ホットスポットの定義が不明確なこと、規制を強化するためには州議会の決議が必要で急速な感染拡大に対処できない恐れがあること、などが問題視されている。バイエルン州のフロリアン・ヘルマン官房長官は感染防止に寄与する新たな法案の作成を連邦政府に促した。

与党内でも中道左派の社会民主党(SPD)と緑の党から強い批判が出ている。緑の党のキルステン・カッペルトゴンター連邦議会議員(保健政策担当)は「この法律よりも悪い法律はない」と言い切った。

身内の批判が強いにもかかわらず今回の法案を政府与党が作成した背景には、規制を可能な限り緩和したい自由民主党(FDP)にSPDと緑の党が譲歩したことがある。SPDと緑の党は、基本的な政策理念が大きく異なるFDPとの連立政権が与党間の対立で機能しなくなることを避けるためコロナ規制でFDPの顔を立てた格好だ。カール・ラウターバッハ保健相(SPD)は「この新しい感染防止法は難しい妥協の産物だ」と苦しい事情を打ち明けた。

新規感染は過去最高の約30万人

ロベルト・コッホ研究所(RKI)が18日発表した17日の新型コロナ新規感染者数は29万7,845人となり、前日に引き続き過去最高を更新した。感染防止策が緩和されたことのほか、オミクロン株の主流が感染力の特に高い亜系統「BA.2」へと置き替えられたことが背景にある。人口10万人当たりの直近1週間の新規感染者数(7日間の発生数)も18日に1,706.3人となり、前日の1,651.4人から大きく増加。これまでに引き続き過去最高を更新した。20日から規制が大幅に緩和されると、感染拡大が一段と加速する懸念がある。7日間の発生数は22日時点で1,733.4人となっており、増加に歯止めはかかっていない。

RKIの17日付週報によると、新型コロナの新規感染者に占めるBA.2の割合は今年第8週(2月21~27日)に50%となり、従来型のオミクロン株「BA.1」(同49.3%)を上回った。第9週(2月28日~3月6日)にはBA.2が62.3%、BA.1が34.8%と差が開いている。

入院する感染者も増えている。人口10万人当たりの直近1週間の新規入院患者数は18日に7.81人となり、前日の7.58人から増加した。3月上旬から増加傾向にある。

新型コロナ患者の集中治療病床使用率は17日12時15分時点で10.3%に上った。こちらも3月中旬に入ってから増加傾向が続いている。入院患者数の増加がやや遅れて集中治療病床使用率の上昇につながっているもようだ。