独複合企業ティッセンクルップは16日、2022年9月通期の業績予測を一部、取り下げた。ロシアのウクライナ侵攻で先行き見通しが悪化したためで、M&A(合併・買収)を除いたベースでフリーキャッシュフローがトントンになるとした見通しを撤回。同社が目指す鉄鋼事業の分社化についても実行可能かどうかを現時点で明言できなくなったとしている。
ティッセンは昨年12月、中核事業5部門(材料取引、産業部品、自動車部品、鉄鋼、軍用船)のうち鉄鋼と軍用船を手放す可能性を明らかにした。鉄鋼については分社化を視野に入れている。同社は今回の声明で、鉄鋼事業を分社化すれば同事業の将来性は高まるというこれまでの見解を堅持したうえで、戦争の勃発は鉄鋼業界に特に大きな打撃をもたらすと指摘。マルティーナ・メルツ社長は「現在のこの不安定な状況下で分社化の実施は不可能だ」と述べた。
同社長はまた、ロシア産化石燃料への依存度を大幅に引き下げることが重要だとも強調した。ティッセンは鉄鋼の脱炭素化を通してその実現に寄与する意思があるとして、欧州連合(EU)やドイツ政府に対し具体的な支援策の確約を求めた。