独化学工業会(VCI)は17日、2022年の業界予測をすべて撤回した。ロシアのウクライナ侵攻で先行きを全く予想できなくなったためだ。現時点で新たな予測を提示することは不可能だとしている。
VCIはこれまで、生産成長率で2.0%(製薬を除くと1.5%)、出荷価格でプラス3.0%(同3.5%)、売上高で5.0%増(同5.0%増)との予測を提示してきた。だが、ロシアの侵攻後に実施した会員企業アンケート調査では54%が「生産高と売上高が今年、減少する」と回答。予測の取り下げが避けられなくなった。
アンケートでは70%が「エネルギー価格の高騰で事業に深刻な影響が出る」と回答した。生産・調達価格の高騰を顧客に「部分的にしか転嫁できない」「全く転嫁できない」は計85%に達している。
ヴォルフガング・グローセエントループ専務理事は、化学業界の生産水準が大幅に落ち込めば自動車、化粧品、衛生用品、建材、包装材、医薬品、電機製品などドイツの製造業全体でサプライチェーンが寸断されると指摘。数年に渡る深刻な不況が到来し雇用が大幅に失われることから、リーマンショックに端を発する金融危機や新型コロナ危機の際と異なり、独製造業の回復には長い時間がかかるとの見方を示した。
ロシアとウクライナへの化学品・医薬品の輸出高は計68億ユーロで、業界売上の3%弱を占める。また、両国には独資本の業界企業が約70社あり、直接投資額は独業界全体の約2%を占める。
21年の業界生産高は前年比で5.3%増加した。新型コロナ危機からの世界経済の回復が反映されている。原材料不足の影響もあり出荷価格は9.3%上昇。業界売上高は17.9%増の2,250億ユーロに拡大した。国内売上が19.5%増の850億ユーロ、国外売上が17.0%増の1,400億ユーロとともに大きく伸びている。