建造物の炭素税を家主も負担へ、住宅などのCO2排出削減策で政府合意

ドイツのロベルト・ハーベック経済・気候相、クララ・ガイヴィッツ建設相、マルコ・ブッシュマン法相は2日、建造物の暖房使用に課される炭素税の負担方式で合意した。熱効率が一定水準以下の住宅では炭素税を、暖房を実際に使用する借家人だけでなく家主にも負担させることが柱。熱効率の低い住宅の所有者に断熱改築や暖房の近代化を促し、国内の二酸化炭素(CO2)排出削減につなげる考えだ。

同国では住宅と交通部門を対象とする炭素税が2021年に導入された。暖房油ないし自動車燃料を購入すると自動的に納税することになる。税額は当初、CO2排出1トン当たり25ユーロだった。22年は30ユーロ、23年は35ユーロ、24年は45ユーロ、25年は55ユーロと毎年、引き上げられていく。26年以降は55~65ユーロの範囲で課税される。暖房油の1リットル当たりの税額は今年が約9.5セントで、25年には約17セントに上昇する。

賃貸住宅の暖房使用に課される炭素税はこれまで借家人に全額、転嫁されてきた。暖房を実際に使用した人が同税を負担するこの方式は受益者負担の原則に合致しているものの、熱効率の改善に向けて住宅の壁や窓、暖房機を近代化するインセンティブは働かない。これでは国のCO2排出削減目標を達成できないことから、政府は熱効率の悪い住宅では家主にも負担を義務付ける意向だ。

具体的にはCO2排出量に応じて住宅を10段階に区分。1平方メートル当たりの年排出量が12キログラム未満であれば家主の負担を免除するものの、これを超える場合は超過度に応じて家主の負担比率を10%単位で引き上げていく。熱効率が最も低い住宅(同排出量52キログラム以上)では家主の負担比率が90%に達し、借家人は10%となる。

経済・気候省によると、一次エネルギー消費量が基準値の55%にとどまる住宅(EH55)よりも熱効率が高ければ、家主は炭素税を負担する必要がない。また、文化財保護の対象となっているため断熱改築を実施できない住宅でも、家主の負担義務は発生しない。

オフィスなど住宅以外の建造物では差し当たり、家主と借り手が炭素税を一律、折半負担するルールを導入する。煩雑な事務手続きが発生しないようにする狙いがある。

政府は今後、今回の合意を法案化し、議会で成立させる意向だ。来年1月1日付の施行を見込んでいる。

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