欧州連合(EU)の欧州委員会は3月30日、域内で販売される幅広い製品を対象に、耐久性に優れ、再利用や修理などがしやすい製品の設計やリサイクルの推進を目的とする、持続可能な製品政策に関する枠組みパッケージを発表した。これはEUの成長戦略「欧州グリーンディール」の主要な柱である「循環型経済行動計画」(2020年3月採択)に基づき、50年までに域内の温室効果ガス排出量を実質ゼロにして、循環型経済への移行を実現するための法的枠組みとなる。
政策パッケージの核となるのは、エネルギー消費の抑制を目的として、環境に配慮した製品設計を義務付けた「エコデザイン指令」(2009年施行)を改正する「持続可能な製品のためのエコデザイン規則案」。現行指令は冷蔵庫や洗濯機など家電を中心に約30の製品カテゴリーを対象としているのに対し、改正案は食品や医薬品などを除くほぼすべての製品をカバーしている。また、現在の指令から、国内法に置き換える必要のない規則に格上げすることで、EU全体でより一貫性のあるルール運用が可能になる。
規則案によると、製品の耐久性、再利用や改良・修理の可能性、エネルギー効率などの基本要件を設定するとともに、製品にひも付けられた部品ごとの詳細情報を記録した「デジタル製品パスポート」を製品本体やパッケージなどに添付することをメーカーに義務付ける。製品パスポートを通じて消費者、販売業者、修理・リサイクル業者などが必要な情報にアクセスすることが可能になり、ライフサイクル全体で製品の修理やメンテナンスがしやすくなる。
また、新規則には製品の廃棄に関する規定が盛り込まれており、一定規模以上の事業者は年間に廃棄した製品の数量や、廃棄方法、リサイクルの取り組みなどの情報を開示しなければならない。
一方、欧州委は政策パッケージに基づく分野別の取り組みとして、「持続可能な循環型繊維製品に関する戦略」と「建築資材の持続可能性に関する規則の改正案」を発表した。繊維製品に関する戦略では、30年までにEU域内で販売される繊維製品を耐久性に優れ、リサイクル可能で、リサイクル済み原料を使用し、危険物質を含まず、労働者の権利や環境に配慮したものにするとの目標を明記。デザイン要件の設定やデジタル製品パスポートの導入に加え、短い周期でデザイン変更を繰り返すファストファッションから、持続性を重視したビジネスモデルへの転換を促す内容となっている。