ボッシュ―水電解槽向け部品事業に参入―

自動車部品大手の独ボッシュは4日、水電解槽向け部品事業に参入すると発表した。脱炭素化の流れを背景に再生可能エネルギー電力で製造するグリーン水素の需要が大幅に増えると見込まれることから、水素生産に用いる電解槽の部品を提供。業績を拡大するとともに、雇用の維持を図る意向だ。燃料電池で培った技術とノウハウを活用する。2030年までに最大5億ユーロの投資を計画している。

電解槽と燃料電池はともに、セルを積み重ねたスタックを中核部品としている。燃料電池が水素と空気中の酸素から電力を作るのに対し、水電解槽は電力を用いて水を水素と酸素に分解する。ともにプロトン交換膜(PEM)を使用する。

ボッシュは燃料電池の開発に以前から注力していることから、電解槽分野に事業を拡大することは比較的容易だ。

同社はスタックと制御機器、パワーエレクトロニクス、センサーをひとまとめにしたモジュールを生産し、25年から電解槽メーカーと産業サービス事業者に販売する計画。まずは来年、パイロット設備を稼働させる。モジュール部品であるため、10メガワット級の小型電解槽からギガワット級の大型電解槽まで幅広く対応できる。

発電効率を高めるとともにスタックの寿命を長期化するため、モジュールはボッシュのクラウドを通してネットワーク化する。これによりメンテナンス中も電解槽の稼働を部分的に継続できるようになり、全面停止の必要がなくなる。

同社はモジュールを、現在一般的な電解槽部品と異なり量産する意向だ。これにより生産のスピードが大幅に高まるとともに、量産効果でコストが低下。グリーン水素生産の拡大に弾みがつくと見込んでいる。独バンベルク、フォイアーバッハ、蘭ティルブルフ、墺リンツ、チェコのチェスケー・ブジェヨビツェ工場での生産を考えている。

ボッシュはこれまで、エンジン車向けの部品を多く生産してきた。車両の電動化を受けこれら部品の需要は今後、大幅に縮小してくことから、新たな雇用を創出しなければ従業員を大量に削減しなければならなくなる。経営陣は将来性の高い水電解槽向け事業を立ち上げることで、雇用を維持することも狙っている。

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