欧州経済の中心地ドイツに特化した
最新の経済・産業ニュース・企業情報をお届け!

2022/5/18

総合 - ドイツ経済ニュース

NRW州議選で中道右派CDUが勝利、緑の党躍進、次期政権のカギ握る

この記事の要約

ドイツ最大の人口規模を持ち日系企業が数多く進出するノルトライン・ヴェストファーレン(NRW)州で15日に州議会選挙が行われ、国政レベルの野党である中道右派のキリスト教民主同盟(CDU)が得票率を伸ばし、第1党の地位を一段 […]

ドイツ最大の人口規模を持ち日系企業が数多く進出するノルトライン・ヴェストファーレン(NRW)州で15日に州議会選挙が行われ、国政レベルの野党である中道右派のキリスト教民主同盟(CDU)が得票率を伸ばし、第1党の地位を一段と強固にした。同党のヘンドリック・ヴュスト州首相が高い人気を保っていることが大きい。今回の選挙では中道左派の緑の党が躍進しており、緑の党は次期政権樹立のカギを握った格好だ。

CDUの得票率は35.7%となり、前回(2017年)を2.8ポイント上回った。事前の有権者アンケート調査では同党と中道左派の社会民主党(SPD)の接戦が予想されていたことから、中道右派の自由民主党(FDP)などからCDUに票が流出。この事情はヴュスト州首相の人気と並んで、CDUに有利に働いた。

緑の党は前回の6.4%から18.2%へと11.8ポイントも上昇した。同党を支持する有権者がこの間、全国的に大幅に増えたほか、同党のロベルト・ハーベック氏やアンナレーナ・ベアボック氏など国政レベルの大臣がウクライナ戦争絡みで人気を高めていることが大きい。今回の選挙で国政が追い風となったのは緑の党だけだ。

SPDは4.6ポイント減の26.7%へと低下し、戦後最低を更新した。ウクライナ支援で煮え切らない姿勢を続けた同党のオーラフ・ショルツ首相は人気が落ち込んでおり、州議選でSPDの得票率を押し上げる効果をもたらせなかった。

国政与党ではFDPも振るわず、得票率は前回の12.6%から5.9%へと6.7ポイント低下した。前回選挙では同党で断トツの知名度を持つクリスティアン・リントナー党首(現在は国の財務相)がトップ候補として州議選に参戦したことから水準が大幅に押し上げられており、今回はその反動が出た格好だ。物価高騰を受けて国が導入予定のエネルギー一時金(300ユーロ)の支給対象から年金生活者を除外することに同党が固執していることは、高齢者層の反発を買っており、マイナス要因となった。また、同党の強い意向で実現したマスク着用義務の大幅縮小は「個人の自由」を求めるコアの支持層には受けが良いものの、それ以外の有権者の間では全体的にみて評価が低い。FDPが得票率を伸ばせるかどうかは非コア層にどれだけ食い込めるかにかかっている。ウクライナ戦争に伴う物価高騰でリントナー財務相が財政支出の大幅拡大姿勢を示していることは小さな政府を求めるコア層の理解を得られておらず、党の求心力は低下気味。ブレーキとアクセルのバランスが難しくなっている。

極右「ドイツのための選択肢(AfD)」は5.4%となり、議席獲得に必要な5%を超えたものの、前回からは1.9ポイント低下した。難民問題が落ち着いていることから、失速した格好。急進左派の左翼党は2.1%から4.9%に上昇したものの、5%にわずかに届かなかった。

FDPの不調、国政のリスク要因となる恐れ

各党の獲得議席数はCDUが76、SPDが56、緑の党が39、FDPが12、AfDが12。合計は195で、過半数ラインは98となっている。

過半数議席を確保できる連立の現実的な組み合わせには(1)CDUとSPD(計132)(2)CDUと緑の党(同115)(3)SPD、緑の党、FDP(107)――の3つがある。このうち(1)についてはSPDが消極的。(3)にはSPDとFDPがともに消極的であることから、次期政権はCDUと緑の党が樹立する可能性が最も高い。(1)と(3)が実現するのは両党の連立交渉が不調に終わった場合に限られそうだ。

FDPは今年、行われた3州の州議選がすべて不調に終わった。これを受け執行部が政策を大幅に見直した場合は、同党とSPD、緑の党からなる国政与党の連携は難しくなる可能性がある。小さな政府と規制緩和を是とするFDPはもともと、政策理念の面でSPD、緑の党との隔たりが大きいためだ。同党が一連の選挙から引き出す結論は、ドイツの政局の大きなリスク要因となり得る。

連立政権が機能不全に陥ればウクライナ戦争への対応や脱炭素化の取り組みに支障が出る。緑の党は大勝したものの、笑ってばかりはいられない。

総合 - ドイツ経済ニュース
企業情報
経済産業情報
COMPANY |
CATEGORY |
KEYWORDS |