ドイツの天然ガス供給に黄信号が灯り出した。ウクライナ経由のロシア産供給が11日に減少。同日にはロシア政府が新たな制裁を即日付けで発動し、ドイツを含む欧州などの計31社が露国営天然ガス会社ガスプロムと取引することを禁止した。独政府は調達先の変更で対応可能で、国内供給に支障は出ないとしているものの、所轄大臣のロベルト・ハーベック経済・気候相は12日、企業や消費者にガス消費量を可能な限り抑制するよう呼びかけた。
ウクライナ経由で欧州に輸送されるロシア産ガスの量が減少したことから、独南東部のヴァイトハウスでは11日のパイプライン流量が前日比で25%以上、減少した。
独連邦ネットワーク庁は11日、減少分はノルウェーとオランダからの輸入拡大で相殺できるとの声明を発表した。「ドイツのガス供給は安定している」としている。ただ、ノルウェー、オランダ産の天然ガスを独南部に供給するのは難しいことから、バイエルンとバーデン・ヴュルテンベルク州では供給不足発生の可能性を排除できないとの指摘もある。
ロシア政府が11日に発動した制裁の対象には、3月末までガスプロムの子会社だった独ガスプロム・ゲルマニアが含まれている。ハーベック氏は12日、この影響で減少する供給量は1日当たり1,000万立方メートルで、国内需要の約3%にとどまると指摘。他国からの調達に切り替えることで対処可能だと強調した。これに伴い調達コストが大幅に膨らんだ場合は国が支援するとしている。
同氏はまた、「ロシアがエネルギーを武器として投入することが改めて示された」と批判し、次期暖房シーズンに向けて国内のガス貯蔵施設をフル充填することの重要性を強調した。LNG(液化天然ガス)の輸入能力を早急に拡大し、調達先を多様化する意向だ。
ドイツには現在、33カ所に計45基の貯蔵施設がある。ガスプロム・ゲルマニア傘下のアストーラがレーデンで運営する施設が最大で、国内容量全体の約20%を占める。企業別ではユニパーが最大手で、同約25%の容量を持つ。レーデンの施設には現在、ガスがほとんど貯蔵されていない。
独政府は4月上旬、ガスプロム・ゲルマニアを信託管理下に置いた。ガスプロムが同子会社を無許可で売却していたことが判明したためで、エネルギーの安定供給を確保するためにガスプロム・ゲルマニアの管理を連邦ネットワーク庁に委託した。