商用車大手の独ダイムラー・トラックは27日、液体水素を用いた燃料電池トラックの走行試験を開始すると発表した。これまでは気体の水素を用いて試験を行ってきたが、同社は液体水素の商業利用を本命視している。気体での試験が順調に進んでいることから、開発のギアを一段引き上げる。
ダイムラー・トラックは昨年5月、燃料電池トラックのプロトタイプ「GenH2 Truck」を用いた走行試験を開始した。すでに自社のテストコースのほか、公道を走行している。同試験では圧力タンクにガス状の水素を補給。燃料電池が適切に機能するかどうかなどをチェックした。これらの課題がクリアされたことから、液体水素を用いた試験に乗り出す。
新たな試験ではGenH2 Truckのシャシーの両サイドに重量40キロの燃料タンクをそれぞれ取り付けた。これに摂氏マイナス253度に冷やして液化した水素を補給する。タンクは断熱性が極めて高く、新たな冷却を施さなくても水素の温度を長時間、一定に保つことができる。
同社が液体水素での燃料電池トラック実用化を目指すのは、ガス状の水素に比べ体積当たりのエネルギー密度が大幅に高く、輸送や航続距離の拡大でメリットが大きいためだ。軽油を用いた従来型トラックと同じ1,000キロ超の航続距離を実現し、顧客の運送会社などが長距離輸送や柔軟な運用をできるようにする。2020年代後半の市場投入を目指している。