自動車大手の独フォルクスワーゲン(VW)は5日、高級スポーツ車子会社ポルシェAGの新規株式公開(IPO)を実施すると発表した。車両の電動・IoT化などトランスフォーメーションに必要な資金を確保する狙い。ポルシェAGは経営の自由度を高めることになる。
ポルシェAGはフランクフルト証券取引上のプライム・スタンダードで株式市場にデビューする。同社の資本を普通株と優先株に折半したうえで、優先株を最大25%売り出す。
これと同時にVWは自らの親会社であるポルシェ・アウトモビール・ホールディングSE(ポルシェSE)にポルシェAGの普通株25%プラス1株を売却する。売却価格は優先株の売り出し価格に7.5%を上乗せした水準となる。
IPOは9月末から10月初旬にかけて行う予定で、市場環境が悪化した場合も年末までに実施する考え。最悪の場合は見合わせる可能性を排除していない。
IPOを実施した場合は12月に臨時株主総会を開き、公開益の49%を特別配当として株主に還元することを決議する。
ロシアのウクライナ進攻とそれに伴う欧米とロシアの制裁合戦、中国のゼロコロナ政策などを背景に世界経済の見通しは悪化している。それにもかかわらずポルシェAGのIPOを決定したのは、◇同社の力強い成長が続いているうえ収益力も高い◇潜在顧客である富裕層が世界的に増え続けている――ためだ。VWのアルノ・アントリッツ最高執行責任者(COO)は「投資家の関心は極めて高い」と明言した。
VWがポルシェAGの普通株と優先株を計画通りに放出すると、両社の支配契約は解消され、ポルシェAGはVWに利益を移転する義務がなくなる。また、ポルシェSEはポルシェAGの重要決議に、VWを介さず直接的に拒否権を行使できるようになる。
ポルシェAGはもともと、ポルシェSEの一部だった。だが、ポルシェSEはVWを買収した際に投機的な手法を用いたことから財務が悪化。経営危機を打開するために自動車事業をポルシェAGという形で分離し、VWの完全子会社へと改めた。このため現在は子会社VWを通して間接的にポルシェAGを支配している。