エネルギー危機対策をVWが策定、メルセデスはガス使用半減が可能に

欧州で天然ガスと電力の供給が大幅に減りサプライチェーンに影響が出た場合の対策を自動車大手のフォルクスワーゲン(VW)グループが策定している。広域停電などが起こることはないとみているものの、局地的な供給不足でもサプライヤーが直撃を受ければVWの車両生産にしわ寄せが出るためだ。危機対策に関与するキーパーソンの発言をもとに23日付『フランクフルター・アルゲマイネ』紙が報じた。

同社は危機対策本部「クリーゼンシュタープ・エネルギー」を設置した。ポーランド、チェコ、ブルガリア、オーストリアなど16カ国のエネルギー動向を注視している。

これらの国にはサプライヤーの拠点が計6,000カ所ある。エネルギーの供給状況が悪化すれば、そのうち40%が直接的な影響を受けるという。そうした事態を想定した対策をサプライヤーと共同で策定している。部品の在庫は積み増す意向だ。

VWグループが独・欧州の自社拠点で使用する天然ガスの量は大幅に削減する。エネルギー供給子会社VWクラフトヴェルクのミヒャエル・ハイネマン社長は削減規模が10パーセントのケタ台の半ばに上ることを明らかにした。本社所在地ヴォルフスブルクの拠点では自社発電の電源を天然ガスに切り替える計画を延期。2024年6月末まではこれまでに引き続き石炭発電を行う。室温はオフィスで19度、工場で17度へと引き下げる。

ドイツ国内の天然ガス不足が一段と深刻化し、配給制が導入された場合については、配給量がVWグループ全体に一括して割り当てられることが最も好ましいとしている。グループ全体の生産体制を最適な形で保てるためだ。最悪でもフォルクスワーゲンAGやアウディAGといった法人単位で割り当ててほしいとの立場で、各工場などこれよりも小さな単位になることは好ましくないとしている。

また、配給を実施する場合は配給量をその日その日で決めるのではなく、週単位で決めることが重要だとしている。次の日の配給量が分からない状態では事業計画を立てられないという事情がある。サプライチェーンにも支障が出る。

VWのロビー活動を統括するトーマス・シュテーク氏は、ガス、電力価格が天井知らずで上昇することも問題だと指摘した。エネルギー集約型の中小サプライヤーが生産縮小や停止に追い込まれ、サプライチェーンに大きな問題が発生しかねないためで、政府に価格対策を求めた。

一方、高級乗用車大手メルセデスベンツはガスの使用量を50%削減する準備を整えた。イェルク・ブルツァー取締役(生産担当)が23日に明らかにしたもので、すでに10%減らしている。ただ、サプライヤーの生産状況によっては同社の生産ラインが停止に追い込まれる可能性もあるとしている。

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