欧州連合(EU)加盟国と欧州議会は13日、気候変動対策が不十分な国からの輸入品に事実上の関税をかける「炭素国境調整措置(CBAM)」の導入に関する規則案の内容で基本合意した。両機関の正式な承認を経て、2023年10月から対象となる鉄鋼やセメントなどを輸入する事業者に二酸化炭素(CO2)排出量の報告を義務付ける。
CBAMは国境炭素税とも呼ばれる。EU域内の事業者がCBAMの対象となる製品を域外から輸入する際、域内で生産した場合にEU排出量取引制度(EU-ETS)に基づいて課される炭素価格に相当する支払いを義務付ける内容。域内の企業が温暖化対策のための重いコストを負担することで、規制の緩い域外の企業との競争で不利な立場に立たされる状況を阻止するとともに、EU企業が厳しい規制から逃れるため域外に拠点を移す「カーボンリーケージ」を防ぐ狙いがある。
欧州委員会は21年7月、30年までにEU域内の温室効果ガス排出量を1990年比で55%削減する目標を達成するための政策パッケージ「Fit for 55」の一環として、CBAM導入に向けた規則案を発表した。欧州委案では鉄鋼、アルミニウム、セメント、肥料、電力が対象となっていたが、今回の政治合意で欧州議会が求めていた水素が追加された。欧州委は今後、有機化学品やポリマーなどを対象に含めるか検討する。
CBAMの対象品目を輸入する事業者は、23年10月からの移行期間に輸入相手国や前年分の輸入量を当局に申告し、製造過程における排出量に応じてEU-ETSに基づく炭素価格分を支払うことになる。現時点で支払いの開始時期は確定していないが、移行期間を経て26~27年の完全実施が見込まれる。EU向けの輸出が多い中国などはCBAMの導入に反発しており、貿易摩擦を招く恐れもある。