半導体受託製造の世界最大手、台湾積体電路製造(TSMC)は12日の決算発表で、欧州工場の建設を検討していることを明らかにした。実現すれば同社初の欧州生産拠点となる。『フランクフルター・アルゲマイネ(FAZ)』紙によると、ドイツ東部のドレスデンに建設する方向で潜在顧客や当局とすでに接触している。
魏哲家最高経営責任者(CEO)は「自動車に特化した技術に焦点を合わせた特殊工場建設の可能性を欧州で顧客、パートナーと検討している」と語った。
FAZ紙によると、同社はすでに昨年、現地の潜在顧客と協議し、関心が大きいことを確認した。独ボッシュ、インフィニオン、蘭NXPが潜在顧客と目される。同社関係者はドイツ政府およびドレスデンの地元ザクセン州政府とも数度、協議を行った。補助金交付の口約束を得ているという。
欧州連合(EU)で策定中の欧州半導体法案が実現することが、工場建設の前提となる。同法案は2030年までに官民で430億ユーロを投じ、開発拠点や生産設備の増強を後押しするほか、有力メーカーの誘致にも力を入れ、東アジアなど域外への依存度を下げて安定供給を確保するというもの。世界の半導体生産に占めるEUのシェアを30年までに20%以上に引き上げるという目標を掲げている。早ければ6月にも施行される見通しという。
ドレスデンは欧州最大の半導体産業の集積地で、業界大手ボッシュ、GF、インフィニオンなどの工場ある。同市から約200キロのマグデブルグには米インテルが170億ユーロを投じて複数の工場を建設する計画だ。