蘭国有送電網大手テネットは10日、ドイツ事業を同国政府に完全売却する方向で交渉する意向を表明した。再生可能エネルギー電力の増加に伴う送電網拡充の投資資金を捻出できないことから、独事業から撤退する意向だ。ドイツ政府はテネットの独事業買収に前向きであるため、取引価格などの条件が交渉の焦点になるとみられる。
テネットによると、2020年代に必要となる自己資金は本国オランダの事業で推定100億ユーロ、独事業で同150億ユーロに達する。同社株100%を持つ蘭政府はテネットのオランダ事業については資金を提供する意向を示している。一方、ドイツ事業に関しては「構造的な解決策」を模索中。独政府が炭素中立化や地政学上のリスクを踏まえ自国内の送電網に出資し統制下に置くことに意欲を示しているという事情もあり、テネットは独子会社テネットTSOの売却交渉に踏み切る。テネットTSOは独エネルギー大手エーオンの元送電部門で、テネットは09年に取得した。
ドイツでは電力価格の引き下げを狙った欧州連合(EU)の送電分離政策を受け、電力大手の大半が2000年代に送電部門を手放した。発電事業と送電事業を現在もともに手がけるのはEnBW1社に限られる。
近年は地政学リスクの高まりを受けて国が送電網への関与を強めており、政府は18年、独送電会社50ヘルツに20%を出資した。今後はEnBWの送電子会社トランスネットBWにも資本参加する可能性が高く、国は独送電4社のうち3社に出資することになりそうだ。