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2023/3/15

総合 - ドイツ経済ニュース

5Gインフラから中国製品排除か、通信会社に除去命令の可能性

この記事の要約

5G通信インフラで現在、使用している重要な構成機器の詳細情報を提出するようドイツ内務省が国内の移動通信サービス事業者に命じたことが7日、明らかになった。安全保障上のリスクなどを踏まえた措置。同省は特定のメーカーを対象とし […]

5G通信インフラで現在、使用している重要な構成機器の詳細情報を提出するようドイツ内務省が国内の移動通信サービス事業者に命じたことが7日、明らかになった。安全保障上のリスクなどを踏まえた措置。同省は特定のメーカーを対象としたものではないと強調しているものの、中国の華為技術(ファーウェイ)と中興通訊(ZTE)の排除に向けた措置と目されている。

2021年に施行された改正連邦情報技術セキュリティ庁法(BSIG)9b条には、ドイツの公共秩序ないし安全保障に悪影響をもたらす恐れのある重要構成機器を内務省は関連省庁と協議して通信インフラから排除できると記されている。そうした機器の製造元が自国政府の直接・間接的な統制下にあるかどうかや、独、欧州連合(EU)、北大西洋条約機構(NATO)の安保目標に合致しないかどうかも審査の判断基準となる。

5Gインフラに新規投入する機器についてはすで、BSIGに基づく事前審査が行われている。今回の措置はすでに使用している機器を審査するもので、安全保障などに悪影響をもたらす恐れのあると判断された場合は使用が禁止され、通信会社は当該機器をインフラから取り除かなければならなくなる。

『フランクフルター・アルゲマイネ』紙によると、内務省は現時点でファーウェイとZTE製機器の使用禁止が決定されると見込んでいる。ただ、禁止決定が下された場合、即時除去が通信会社に命じられることはなく、数年間の猶予期間が与えられるという。通信インフラ機器は通常、数年で交換されることから、禁止命令は実質的に、交換後に投入する製品を中国メーカー以外のものにすること意味するもようだ。

ドイツの5Gサービス4社のうち新規参入の1&1は中国製品を一切、使用していない。一方、ドイツテレコム(Tモバイル)、ボーダフォン、テレフォニカ・ドイチュラント(O2)の3社は基幹回線網(コアネットワーク)で数年前から中国製品を使っていないものの、コア以外の5Gネットワークでは華為製品が約5割を占めている。「重要な構成機器」には非コアネットワークの機器も含まれることから、除去の猶予期間が短い場合は財務上の痛手が大きい。テレフォニカの広報担当者は同紙の問い合わせに、「構成機器(の使用)が禁止されるのであれば、交換のために十分な長さの期間が与えられなければならない」と強調した。

内務省は4月4日までの書類提出を通信各社に命じた。審査は夏まで行われると業界内では予想されている。

今回の措置を政府がなぜ打ち出したのかは不明。このほど訪米したショルツ首相に米国のバイデン大統領が圧力をかけたとの観測もあるが、裏は取れていない。

DB発注のITネットワークに華為製品

一方、10日にはドイツ鉄道(DB)が発注した社内ITネットワークに華為製品が使用されることが分かった。DBは鉄道という重要インフラを運営する国有企業であることから、波紋を広げている。ロイター通信が報じた。

DBは昨年12月、業務用ITネットワークの構築をドイツテレコムの子会社ビジネス・ソリューションズに委託した。このネットワークに華為製のルーターとサーバーが使用される。

鉄道のITシステムは重要インフラに指定されていない。DBの広報担当者は、発注したシステムは公共のものではないため当局への報告義務はないと述べ、法律上の問題はないとの見解を示した。

だが、サーバーなどで使用されるOSは定期的に更新されることから、製造元によりひそかにマルウエアが送り込まれるリスクがある。与党・緑の党の連邦議会議員は、DBが華為の製品を使用するという話が本当であれば深刻な問題だと懸念を表明した。

与党・社会民主党(SPD)のニルス・シュミート議員(外交政策担当)は、BSIGの適用対象をこれまでの電気通信から病院やエネルギー事業者、鉄道にも拡大適用することを与党内で協議していることを明らかにした。そうした措置の必要性についておおむね合意が形成されているという。