低炭素技術促進と重要原材料確保へ、欧州委が2法案を発表

欧州連合(EU)の欧州委員会は16日、2050年までの気候中立化に向けて再生可能エネルギーや電気自動車(BEV)をはじめとするグリーン産業の競争力強化を目的とする「グリーンディール産業計画」の一環として、温室効果ガス排出の実質ゼロに貢献する低炭素技術について、EU域内での生産拡大を目指す「ネットゼロ産業法案」を発表した。また、BEVやハイテク機器などに使われるレアアース(希土類)など重要鉱物資源の域内調達を促進する「重要原材料法案」も同時に発表した。今後、欧州議会と閣僚理事会で両法案について討議する。

ネットゼロ産業法案は、規制環境を整備してEU域内におけるネットゼロ技術の生産拡大と競争力強化を図り、より安全かつ持続可能なエネルギーシステムを構築することが最大の目的。クリーンエネルギー技術関連の市場規模は世界全体で30年までに現在の約3倍の年6,000億ユーロ規模に拡大すると予測されており、同分野への投資を促進してEU経済を活性化させる狙いもある。

法案によると、太陽光・熱発電、陸上・洋上風力発電、バッテリー・蓄電技術、ヒートポンプ・地熱発電、バイオガス・バイオメタン、二酸化炭素(CO2)回収・貯留(CCS)、水素を製造する電解槽、グリッド技術、化学反応や原子核反応を外部から起こすことでエネルギーを発生させる代替燃料、小型モジュール炉などをネットゼロ技術として指定。30年までにこうした低炭素技術に関連した製品の40%を域内で生産することを目指す。

ネットゼロ技術への投資を促進するため、加盟国に行政手続きを一括で処理する単一窓口の設置を義務付け、生産拠点を新設する際などの許認可プロセスを簡素化して、生産能力に応じて12カ月以内または18カ月以内に審査が終了するようにする。また、国家補助規則を緩和し、特に重要な戦略的ネットゼロ技術に対して加盟国が補助金を交付できるようにする。

一方、重要原材料法案は、レアアースやレアメタル(希少金属)、リチウム、銅、ニッケルなどの鉱物資源について、30年までにEUの年間消費量の少なくとも10%を域内で採掘し、40%を加工する目標を掲げる。15%は再利用することも目指す。さらに戦略的に重要な鉱物資源について、域内での年間消費量の65%以上を域外の1カ国から輸入することを禁止する。これは特にレアアースやリチウムなど、中国が高いシェアを占める鉱物資源の調達で「脱中国依存」を図る狙いがある。

また、重要原材料プロジェクトの許認可手続きを簡素化して資金調達しやすい環境を整備する。採掘は24カ月、加工・リサイクルは12カ月以内に許認可の判断が下りるようにする。

欧州委のフォンデアライエン委員長は声明で、デジタルおよびグリーン経済への移行を進めるうえで重要鉱物資源が不可欠だが、現状は多くの品目で域外国からの輸入に依存していると指摘。「信頼できるパートナーとの協力関係を強化して、重要鉱物を安定的に調達できるサプライチェーンを構築する」と表明した。

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