独北部のハンブルク港トラーオルト・コンテナター埠頭(CTT)に海運大手の中国遠洋海運集団(COSCO)が出資する計画は認可されない可能性があることが分かった。外資による重要インフラへの出資規制を定めた政令に基づく審査を新たに行わなければならないことが明らかになったためだ。複数の独メディアが報じた。所管官庁である連邦経済・気候省(BMWK)の広報担当者は『フランクフルター・アルゲマイネ(FAZ)』紙の問い合わせに、「(認可の)前提が変わったため、我々BMWKは実情への影響を検証する」と回答した。
COSCOは2021年9月、CTTに35%の戦略出資をすることでハンブルク港運営会社HHLAと合意した。独連邦カルテル庁は出資計画を承認したものの、政府・与党内では強権化する中国に対して批判的な緑の党と自由民主党(FDP)が承認に強く反対。貿易法に基づいて自国企業への外資の出資計画を審査する所管大臣のロベルト・ハーベック経済・気候相(緑の党)は当初、認可しない立場を示していた。
これに対しオーラフ・ショルツ首相(社会民主党=SPD)が認可支持の姿勢を打ち出したことから、政府は22年10月、COSCOの出資を25%未満の純投資に制限するなどの条件付きで取引を承認することを決定した。HHLAとCOSCOはこれらの条件を踏まえて再交渉し、新たな契約を締結。12月30日に書類をBMWKに提出した。
新契約は政府の条件を満たしていることからBMWKに速やかに承認されると見込まれていたが、審査は予想に反して長期化している。HHLAの広報担当者はFAZ紙に、連邦情報技術セキュリティ庁(BSI)がCTTを1月に重要インフラに指定したことが原因であることを明らかにした。
CTTの重要インフラ指定は、「BSI法上の重要インフラ規定に関する政令(BSI-KritisV)」に基づく措置だ。同政令では貨物取扱量が年327万トン以上の港湾が重要インフラと規定されている。CTTは取扱量が1,210万トン(21年実績)に上ることから、重要インフラに該当する。
欧州連合(EU)域外の企業がドイツの重要インフラに10%以上の出資を計画している場合、国は安全保障上の審査を行うことができる。審査の結果、ドイツの公共秩序ないし安全保障に危険をもたらす恐れがあると判断されれば、出資計画は認可されない。
現行BSI-KritisVは22年1月1日付で発効した。それにもかかわらず、23年1月までCTTが重要インフラに指定されなかった理由は定かでない。
こうした動きに中国政府は警戒感を示している。同国外務省の汪文斌報道官は13日、「商業上の協業を政治化し、イデオロギーないしは安全保障に関する事柄にすることをドイツ側が見合わせることを希望する」と述べ、独政府をけん制した。