ドイツ経済の停滞感が強まってきた。エネルギー価格が下落し、昨年秋に比べると状況は改善しているものの、景気に勢いはなく、本格回復の見通しも立っていない。独商工会議所連合会(DIHK)は22日に発表した企業景気アンケート調査レポートのなかで、2023年の国内総生産(GDP)成長率を前回予測と同じ実質0%に据え置いた。景気分析担当の役員は「年初から懸念されていた横ばい傾向は続いている」と述べた。
DIHKは毎年3回(年初、初夏、秋)、会員企業を対象に大規模な景気アンケート調査を行っている。今回の初夏調査では約2万1,000社から回答を得た。
それによると、事業の現状を「良い」とする回答の割合は前回調査(年初)と同じ34%、「悪い」も横ばいの15%で、「良い」と「悪い」の差(DI)は19ポイントで変動がなかった。同DIを部門別でみると、製造は2ポイント減の19ポイントに悪化した。エネルギー価格高止まりの直撃を受ける中間財で3ポイント減の12ポイントに下落。化学は4ポイント減のマイナス3ポイント、製紙は14ポイント減のマイナス19ポイントへと落ち込んだ。
投資財は2ポイント増の35ポイントに改善した。サプライチェーンのひっ迫が改善したことが大きい。機械は3ポイント増の39ポイントとなった。自動車は横ばいの18ポイントだった。
消費財は前回に比べると3ポイント上昇したものの、水準自体は5ポイントと低い。高インフレで消費者が支出を抑制していることが背景にある。
今後1年間の見通しについては事業が「改善する」との回答が、過去最低となった前回の16%から18%へと増えた。「悪化する」は7ポイント減の23%に減っており、DIは9ポイント増のマイナス5ポイントへと改善した。長年の平均(プラス5ポイント)に比べると依然として大幅に低い。エネ価格の高止まりのほか、金利の急上昇と世界需要の低迷、専門人材不足が足かせとなっている。金利上昇の影響を強く受けているとの回答は前回の6%から21%へと大幅に上昇した。
今後1年間の事業リスクに関しては「エネルギー・原料価格」との回答が最も多く65%に上った。前回の72%から低下したものの、水準はなお高い。「人材不足」は2ポイント増の62%で2番目に多かった。3位の「人件費」は4ポイント増の53%となり、過去最高を記録している。
今後1年間の投資額を「増やす」との回答は1ポイント増の28%に拡大した。「減らす」は2ポイント減の24%となり、前回に引き続き低下したものの、先行き不透明感を受けて投資を抑制する企業は依然として多い。
メーカーを対象に今後1年間の輸出見通しを尋ねた質問では、輸出が「増える」との回答は横ばいの23%、「減る」は2ポイント減の22%だった。DIはマイナス1ポイントからプラス1ポイントに改善したものの、長年の平均であるプラス17ポイントを大幅に下回っている。エネルギー集約型企業が多い中間財がマイナス5ポイントとなり、足を強く引っ張った格好。投資財も1ポイント減の10ポイントへとやや落ち込んだ。
業界別では金属製造・加工(-19ポイント)、金属製品(-6ポイント)が特に振るわなかった。化学は2ポイントと増加が減少をやや上回っている。
同DIが最も高かったのは製薬で20ポイントに達した。電機は13ポイント、自動車は8ポイント、機械は7ポイントだった。
今後1年間の雇用の見通しに関しては「増える」が17%、「減る」が15%で、ともに横ばいとなった。DIは2ポイント。部門別でみるとサービスが4ポイント、製造が2ポイントとなったのに対し、流通はマイナス3ポイント、建設はマイナス8ポイントと振るわなかった。