天然ガス価格の急騰に伴う資金繰りの悪化を受けて昨年末に国有化された独エネルギー大手ユニパーは23日、ガスの代替調達により新たな損失を計上することはないとの見通しを発表した。市場価格が大幅に下落した好環境を利用して先渡取引を実施し、都市エネルギー公社や産業顧客向けの2023年と24年の供給分をほぼ全量、確保したためで、国の追加出資を受ける必要性はなくなったとしている。ユッタ・デンゲス最高財務責任者(CFO)は翌24日の株主総会で、同社を可能な限り速やかに再民営化する意向を表明した。
ユニパーはドイツ最大の天然ガス輸入会社。ガスの大半をロシア国営のガスプロムから長期契約に基づいて調達してきたが、ウクライナ戦争に伴う欧米の制裁への報復措置としてガスプロムが供給を縮小・停止したことから、ユニパーは極めて割高なスポット市場でガスを代替調達。財務が急速に悪化した。
ユニパーが経営破たんするとドイツのエネルギー供給に大きな支障が出ることから、政府は同社を昨年末に国有化した。これまでに130億ユーロ強の資金を注入している。デンゲス氏は4日の決算発表で国の追加資金注入がいずれほぼ確実に必要になるとの認識を示していたが、同社はそれから1カ月足らずで資金面での自立にメドを付けたもようだ。
国は出資比率を28年までに現在の99.12%から25%プラス1株まで引き下げることを欧州連合(EU)の欧州委員会から義務付けられている。デンゲス氏は出資比率引き下げの道筋を今後数カ月で明らかにする意向を表明しており、同義務が前倒しで達成される可能性も出てきた。
ユニパーによると、天然ガス価格が大きく下がったことから、先渡取引により税引き前利益が20億ユーロ以上、押し上げられる見通し。23年12月期は調整前ベースの営業損益と純損益がともに黒字転換すると見込んでいる。